恒続林の条件と造成

はじめに
 恒続林は森林美を実現し、施業林の美を追求する森林美学と一致する。今田によれば、森林美学の目標は功利と美と調和であるという。そして、その目標は恒続林によって実現するという。森林経営者は、林木の成長を収穫を目標に、日々、森林を見ながら、手入れして、促進させようとする。そして、林木の成長よりは、森林の状態に関心が向かっている。林木の成長を森林の状態によって促進させようとする時、森林有機体とそれを構成する高木の役割を同時にとらえる恒続林の考えに到達するのであろう。メーラーは森林家の実践の中に恒続林の実現を見出した。
 われわれも、恒続林を実現した森林経営者を、初めて見出すことが出来た。その恒続林はどのような姿で現れ、美を賞賛するに値するのであろうか。また、その恒続林を作り出すには、どのような方法が取られたのか。考察に値する課題である。その森林とは大町、木崎湖湖畔にある荒川さんの森林である。

恒続林の条件
 恒続林は高齢林であり、択伐林であり、多くは混淆林である。林分構成は多様で、合自然的で、地形条件などに即応している。また、森林を構成する植物相は変化に富み、多段に生育している。林木の成長は健全であるが、多様な樹種で老木も残されている。林道は地形に無理なく、縦横に配置され、どの場所にも接近しやすい。
 以上のような、森林の状態を見出すが、その森林が、生長量が旺盛で、木材生産にどのように有利となるか、また、その森林が美と言い得るかが、功利と美の調和の判断である。美に関しては、一々、場面ごとの絵画的な眺めを語るには、あまりに、多くの場面に語りつくすことは出来なくなる。功利に関しては、収穫できる林木の成長とその持続性から判断できるだろう。計量的に、収穫予測を行うには、照査法のように、毎木の継続的なデータを得る必要がある。

恒続林の造成
 恒続林は、継続した森林育成の中から生み出されたものである。一朝一夕にはできないことはあきらかであるが、日々の森林育成に、将来の森林の目標がなくてはならない。森林が生育すれば、競争関係が顕著になる。自然の間引き以前に、間引いて競争を緩和させ、森林の成長を誘導することが出来る。それを間断なく繰り返し、林木だけでなく、森林環境全体の変化を読み取ること、誘導することが、恒続林の造成方法といえるのではないだろうか。
 しかし、われわれの関心は、伐採木を選定する際の判断である。伐採は木材の収穫となるから、いかに高額に売却できるかが大きな関心事であるには違いない。しかし、それ以上に、伐採によって生じた林冠ギャップによって、次にどのような変化を想定しているかである。隣接した高木は成長を促進される。下層の林木が繁茂して、高木層を更新させていく。新たな競争関係に到達した時、次の伐採木の選定が必要となる。
コナラが間伐されている。
カラマツ高齢林で間伐されている。