今田先生「森林美学」講義第8 回

今田先生講義録11964 北海道大学農学部林学科

12月9日 

 

Gruenflaeche 緑地

 

 都市計画に当たって,空地,自由空地Fleieflaecheをどのように設けるかは大きな問題である。自由空地の大部分は芝生または樹木で緑装するのが常である。したがって空地は大体において緑地であり,都市を美化し,市民のrecreationに役立つ。都市では人工美が多くなるが,その中に残された自然木,天然林は人工によっては得られないくつろぎが与えられ,これを大切に生かすべきである。日本の現状ではこれを失っている場合が多い。

 

並木Strassenbaum, Alleebaeume

 並木は都市に最も普通に見られる緑地の一種である。並木の与えてくれる緑陰は涼しい木陰のために喜ばれるばかりでなく,並木そのものが美しく,保安上の効果があり,地区の境界線となる。

 美観の点から,次のような点が上げられる。

  • 景色の統一 都市では種々雑多の建物が並び,それも雑然としている。色彩,形からも統一がないのが普通である。ここに並木を植えると,並木によって全体が統一され,雑然とした市街が美しくなる。並木で美しく飾られた場所が並木を取り除いたために見すぼらしくなることがある。なお,田園の畑地などの配列が不規則でただ広々としてまとまりがない場合,道に並木があると同じように統一されて美しくなる。
  • 風景の縁取り これは絵画に額縁をかけると囲まれた画面に集中され美しくなる。景色の場合も同様に並木のフチ付けで美しくなる。
  • 風景に緑を添える。 緑のいない風景は寂しい風景なりやすいが,緑を添えると親しみのある風景となってくる。また,都市の建物はコンクリート,石のような灰色に近い色であるが,それに緑を添えることによって親しみを与える。
  • 質的に変化を与える。 都市の風景はコンクリートとかアスファルトのような硬い材料で作られているが,そこに樹木が現れてくると,その硬さに対して,柔らかい感触が変化を与え,親しみを与える。
  • 道路を強調する。 道路に沿って並木があると道路の形が強調される。幾何学的な道路の曲線,直線が強調される。
  • 路面の水平方向に,垂直のコントラストの美観が現れる。すなわち,路面は水平でも並木はそれに直角である。その端的な景色が美しい。したがって並木を植える場合,路面と同じ平面に植えることが美観上要求される。 

 

並木の植栽の様式 

規則的な植栽 なるべく同じ形,同じ大きさの樹木を一定間隔で植える方法,これは普通に行われていて,植えやすく,よく統一された人工美を発揮し,都市の街路樹に適当する。

不規則な植栽 都市に不規則な植栽は行われなかったが,新都市に行われ好評である。大小不同の樹木を樹種が異なるものも変化に富み,環境と調和すれば美しい。堅苦しさのない良さがある。樹種が違う時は将来のことを考えて植える必要がある。また,路傍の自然木,建物の前庭,建築物なども考えに入れて設計しなくてはならず,規則的に植えるよりも難しい。

 

仕立様式

自然仕立て 自然の樹形を生かし,個有の木の美しさを尊敬するような方法で,木の形も大きくなるヨーロッパにはこのような並木が少なくない。したがって広い街路,公園道路 遊歩道路,住宅街などに適当する,自由な自然の美しさを感じる。防風防火の効果も大きい。

人工仕立て 強度の剪定をして人工的に仕立てる方法,狭い道路や電線の邪魔になるところ,極端には固有の樹形を無視して刈り込みするが,なるべく固有の樹形は生かすべきである。繁華街では人工的な扱いが調和することもある。

 

植栽の位置

車道,歩道の区別があれば,車道の歩道寄りに植えるのが普通だが,建物が」建築線より後退している時は,その建築線に植えるのが普通である。配列は左右対称が普通で,これは並木本来の性格と一致する。互い違いに植栽することは,狭い場所では必然的な美しさを生じるが,なるべく避けた方が良い。下手をすると散漫になりやすい。

樹種が違い,これを2列の植え並べる時は違う樹種の間には別の並べ方があって差し支えない。むしろその方が必然的である。

 

なお,植栽の位置がいろいろ工夫され,特徴あるものができてくる。この例は

 

道路幅が16〜20m以下の場合,1列 20m以上2列40m〜50m以上,4列も可

並木の間隔が小さくなると煩わしい。古いものは狭すぎる。遠過ぎれば散漫になる。道幅などが関係する。