風致と風景 囲繞景観の空間スケール 

 眺望景観は囲繞景観の空間スケールが広大なだけであり、風景の知覚における眺望の開放感は、囲繞の空間スケールによって微妙に相違してくる。生駒谷と松本平で対比を感じた。
生駒谷平群町からの葛城、金剛山系の遠望   山系を縦に眺めているために孤立した山に見える。生駒谷が開け、さらに金剛山系の谷が見通しの眺望を構成している。
生駒谷平群町からの生駒山の眺望   生駒山山頂にはテレビ塔などが林立しているが、山のゆったり丸い稜線は眺望に雄大さをもたらしている。
松本平、塩尻方面の遠望   平野の広がりの向こうに山地が見える。霧訪山を越えて南アルプスの峰々が塊りとなって見える。手前の山が松本平の囲繞景観を構成するなら、南アルプスはそれを超える眺望を構成している。
 視線を水平に向ければ平野の地表そのものも囲繞景観を構成する囲障となり、眺望は何重もの囲繞景観の重なりで成立しているのであろう。囲障の高さと距離で視角幅が決まり、囲繞景観要素となる。囲繞と感じる意識は人によってどのように異なるのであろうか。囲繞の中心に見る人の場所が意識され、その場所が居住の場であれば、囲繞は何らかの生活意識の及ぶ範囲であるだろうか?