森林の下刈

 森林の下刈には、従来から使われた鎌がよい。ステンレス製の小さな鎌が特にツルの刈り払いに便利である。動力による刈り払い機は森林用の歯をつける必要がある。自分は鎌を使うが、大きな鎌は刃を研ぐ必要がある。高価な鎌も森林内の作業ではちょっと地面に置いた際に見失う事が多い。多くの鎌を林内に置き忘れてしまった。

 下刈は林業では植林後に苗木が生育して隣接木の樹冠が接続して林冠の閉鎖が完了する数年間にわたって継続して行う必要がある。伐採後に裸地が生じると草本類の侵入や広葉樹の萌芽、埋土種子の発芽が一斉に生じてくる。苗木を守るために、苗木以外の植生をしなくてはならない。そのための作業が下刈りである。年に2回6年間にわたって作業を行うことは大変な労力と費用がかかる。できるだけ、皆伐面積を大規模にならないようにする事が大切であり、残存木によって下層植生の繁茂を抑制する択伐を行う事が望ましい。皆伐区域に対して、12倍の下刈り区域が増大することは心しなくてはならない。

 下刈は全刈りではなく、苗木とともに既存植生に有用な種類を残すことも配慮することも大切であり、将来の豊かな森林を想像する事ができる。山菜、薬草の種類や下層の美しい潅木、苗木の成長に混在する樹種などの芽生が生じていれば、楽しい森林のイメージが生じ、一部、ススキなどの草原や野草の庭園的な空間も作ってやれば楽しめる草刈りとなる。この楽しい草刈りを単なる作業に変えるのはあまりにももったいない。我を忘れて草刈りに没頭する。

 この労働の最大の難敵は、猪に熊、毒蛇、蜂に虻に蚊、毒毛虫などである。採取して危険な毒草に毒きのこと生息する生物に注意しなくてはなら無い。難敵とともに小鳥や虫の鳴き声や美しさに魅惑される喜びも多い。

 下刈の相手となる植物も様々である。蔓や匍匐、繁茂、回復など植物の生育の方法に対応して、鎌の使い方も刈り方も変えていかなくてならない。柔らかい茎の植物は簡単だが、ササなどの茎の硬いものは鎌も役立たないこともある。剪定バサミや鋸を腰につけて、時にはこれを使う。この時、鎌を手放してしまうので、見失いように注意する必要がある。

 仕事が終わり、道具をしまい、衣服のほこりを払って帰途につくのである。しかし、8月までは、1ヶ月も立たないうちに植物の繁茂は著しいのである。