2009-01-01から1年間の記事一覧

西洋庭園と森林

はじめに 庭園は住宅に付随する居住空間の戸外部分である。西洋庭園(ガブリエーレ・ヴァン・ズイレン:ヨーロッパの庭園、創元社、1999年)は古代から中世から近世、近代へと、変遷しているように、描かれている。しかし、それは変遷ではなく、中世の領主の…

ザーリッシュの森林景観

はじめに 小池先生より「Waldaestetik」の著者のStoelb氏の発行しているカレンダーを送っていただいた。 この表紙の写真は11月、トウヒであろうか?保残木作業によって林床からトウヒの稚樹が生育しているのだろうか。下層に見られる紅葉した木はナラなので…

単調な森林景観

はじめに 松本や伊那の森林景観に単調さを感じているが、それは、松本、伊那に限らず、関西や北海道にさえ感じられた。私だけの感覚なのであろうが、理由を考えて見ると、年齢層が一様であることと、放置された状態に起因するようである。人工林、自然林の変…

環境変動と景観破壊

はじめに 小池先生から紅葉に関する論文を送っていただいた。紅葉の時期が遅れており、その要因に環境変動が作用していることを推定している。北海道の紅葉の美しさを体験したものとして、小池先生の指摘に環境変動の深刻さを感じるのである。紅葉は勿論、落…

森林空間と庭空間の手入れ

はじめに 森林に行けば、何か気持ちよさを感じ、また、その気持ちよさを害している要因を除きたいと思う。突き出した枝が歩行の邪魔になれば、その枝を除こうとするは誰しもであろう。ゴミが落ちていれば拾い、野草がササに埋もれようとしていれば、ササを刈…

里山の使用価値と商品価値

はじめに 面白いほどよくわかる「マルクスの資本論」を読んでいて使用価値と商品価値の関係が最初に示されている。これを里山に当てはめていると、簡単な図式的な解釈ができる。里山が最初に問題とされ、概念として示されたのは、高度経済成長期のあたりであ…

風致林施業の継続

はじめに 施業林は木材生産の目的によって施業方法が選択されており、様々な施業方法がある。戦後の植林、拡大造林における林種転換における造林は、当時の林業政策であったが、施業林の成立を目指したのであろうか。植林された林木が成林し、収穫期に達して…

地域景観協議会

はじめに 長野県内には各地域の地域景観協議会があり、それぞれの地域の景観形成に関連する団体が集まって施策を協議することになっている。私は一つの地域の協議会の学識者として1年間に一回の会議に出席させてもらっている。景観活動を行っていないで、高…

日本の庭ことはじめ6 デザイン論

はじめに 岡田さんの著書は庭園史の本として位置づけることが出来ないことは明らかである。庭園を鑑賞するための本でもない。庭園デザインの本と言ううことは出来るが、単なる庭造りではなく、庭造りに根拠を見出そうとする本といえるだろう。庭づくりは誰で…

新月の伐採

はじめに 新月に伐採した木材は、材質が良いという話があるということを大工の棟梁が話していた。棟梁も特に新月の木材を使ったわけではないので、実際は分からないらしい。何故そういわれるのか、また、どの程度、材質が良くなるのかも定かには分からない話…

森林の個性

はじめに 森林を林相という言葉で特徴を示すのは思い切った方法だと感心した。子供の頃の森林は木の生えている場所であり、一本一本の木が特徴的だった。いや、特徴的な木を見つけるだけで、森はただ未だ知らない木のある広がりであって、森を見ることは無か…

計画者の挫折

はじめに 現在は、計画の時代と言ってよいかもしれない。行政体において様々な委員会があり、構想計画、基本計画、事業計画が検討されている。委員会は行政体の作った計画を検討し、科学的、民主的決定のお墨付きを与えるものである。しかし、それらの計画は…

山村の未来に残す環境

はじめに 世界遺産登録に指定されるために運動を起こしている地域はいくつもあるであろうが、すでに指定された地域は妥当な感じがする。これに対して、未だ指定されていない地域には何か難点があるのだろうか。また、世界遺産に指定される意味とはなんだろう…

若木の空間

はじめに 森林の大面積皆伐が少なくなって久しく、若木の林は小面積か、山火事跡地、耕作や開発放棄地に見出しているのだろう。里に近い林は、草地からの推移はアカマツ林となり、アカマツの衰退とともに広葉樹林となっている。また薪炭林や広葉樹の皆伐地か…

枯れ枝の木工

はじめに マツは密生した林では早くに枯れ上がり、下枝は高くついている。その下に太い枯れ枝が残っている。その枯れ枝を切ると、年輪が細かく詰まっていて、中心は赤く硬い部分が見られる。幹にも同じ赤味があり、年数がたつと外縁に広がっていくそうである…

巨木の空間

はじめに 小田原のI氏に、I氏の所有する伊那の森林の手入れを任せてもらいたいとお願いしたところ、快く承諾をしてくれた。さらにI氏から「神社は面積が70アールありシイの巨木が22本もあり昔から「椎の木森」として有名ですが手入れが全く行われず竹が…

近代工芸運動の意味

はじめに ウィリアム・モリスの近代工芸運動が、日本では民芸運動へと影響した。日本の江戸時代の工芸は高い水準に達して、ジャポニズムの影響を及ぼしたのに、日本では伝統工芸を衰退させ、民芸運動によって再評価されることになった。日本の工芸は職人の高…

森林と風景の成長

はじめに 国木田独歩の「武蔵野」は著名な随筆となり、雑木林への関心を増大させたといえる。しかし、都市近郊に住んだ著者が未だ残る農村風景の中を散歩し、鑑賞するものであった。これは、志賀重昂の「日本風景論」にも通じた態度であったろう。こうした態…

展望広場の条件

はじめに 展望は高い山、或いは高い塔の上から、鳥瞰して見出せる。山の場合は下方が鳥瞰できる場所が地形に遮られて限られる。同時に森林によって遮られることが多く、展望を得るには塔が建てられることもある。都市内では建物で遮られて、高い建物、塔を作…

生活空間 行動と時間

はじめに 生活空間は戸内と戸外に別けられる。これを生活時間から考えると、戸外での行動は遥かに少ない。また、人によるだろうが、個人的関係と社会的関係において行動を分けると、社会的行動の時間もまた少ない。生活時間のほとんどが、戸内で個人的行動の…

シークエンス景観

はじめに シークエンス景観をCiNiでみると800件以上の論文が見出される。古くは1960年代から、1980年代を経て、2000年代まで論文の傾向は変遷しており、2000年代に数多いということには、時代的な要請があり、また、その時代的要請に変遷があるのであろうか…

自動車からの景観

はじめに 狭い自動車は、シートベルトに縛られて座ったきりである。移動のために運転者は前方に目を配り、衝突しないこと、行く先への経路を信号で判断して見落とさないことに注意している。同乗者と話をし、音楽を楽しむこともできるが、道路の状況に油断す…

動的景観―前方の知覚

はじめに 子供の頃、汽車に乗るのはめったに無い楽しみだった。どこか、遠くに行けるということもあるが、汽車に乗っていること自体が楽しみといえた。労せずして進行し、汽車の速度によって眺めの変化が生じる。汽車の先頭の機関車で機関シ手が釜に石炭を放…

造園の本質

はじめに 「造園の本質」は恥ずかしながら、私の卒業論文の題名である。先日、その卒業した大学で研究室百周年の記念事業が行われ、出席させていただいた。卒業以来、研究室を訪れたことはなかったので、躊躇もあったのだが、研究室の教授の親切なお誘いから…

高齢林

はじめに 森林も人間の寿命のように年をとる。現在の年齢は過去に遡って誕生した年からの始まりで、歴史的な年代で時代を示すことになる。林齢によって幼齢林、若齢林、壮齢林、高齢林、老齢林へと年を重ねる。人口の年齢構成と同じく、国や地方で累積して示…

道路景観と森林景観

はじめに 道路に自動車が見られなかった時代、都市内の街路は都市景観そのものであり、街路は建物の構成によって視界が開かれ、街路に面する建物の前面は、外観が景観に考慮された。また、街路は開放的な空間として享受され、緑陰と見通しのために並木が配置…

林間住宅

はじめに 林間に住宅を作るとどのような住みよさが得られるのであろうか。アメリカの住宅地のイメージは芝生の前庭が隣家と連続し、広々した芝生の中に住宅が離れて連続するものである。しかし、ボストン郊外の森の中を通り過ぎた時、林間が住宅地として展開…

田園環境工学の幻想

はじめに 大学と社会の関係において、社会の必要を対象にした知を開く学問の追求が大学の役割であることは確かであろう。特に地方大学は地域社会と密着して展開する上で、地域社会の必要に根ざすことが必要である。農学部においては従来、地域の農畜林業と関…

森と木材

はじめに 森は樹木によって構成され、樹木はいつか年老いて枯れていく、一方で、若い樹が育ち、森はいつまでも続いていく。枯れていく樹を人間が除いても、同じように若い樹が育てば、森林は永続する。樹の寿命が尽きるまで森の中にあるのが、天然林であり、…

ポロトコタン

はじめに 北海道の先住民、いや、信州にもいたと言われるアイヌの人々の文化がこんなに身近に感じられたことは、かってなかった。縄文から弥生文化への移行は弥生人が大陸から渡来して、縄文人を征服したり、追い詰めて行ったことは、古代史の記述の中に垣間…