2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

風景とイメージ

はじめに 風景の知覚によって風景はイメージとして認識され、記憶される。しかし、環境を知覚する中から風景として認識するのは、風景のイメージが予め意識されているからということである。知覚は主体と外界の交流過程の断面であり、主体における外界の意識…

風景の空間知覚

はじめに 視覚を表現するものが、絵画や写真であるが、それは、われわれの網膜に写る画像の視野の一瞬である。絵画や写真が平面であり、視野もまた平面である。視野、キャンバス、写真判は空間を写すフレームのようにも考えられるが、空間の断面を知覚してい…

人工緑化(建設)と自然回復(廃墟)

はじめに 人工の緑化とは廃墟の自然回復似ているところがある。人工と自然の拮抗関係によって 開発と自然破壊は逆の側面である。廃墟への愛好は西洋の庭園趣味の中に見られるが、日本でも芭蕉の俳句に「夏草やつわものどもの夢の跡」にもある。廃墟は人工も…

環境共存ー仮説の社会構造

はじめに 地球の環境が生み出した生物の進化を考えると、生物は環境の一部である。その生物の行う光合成活動によって、大気中に酸素が増えていったという。そこで、陸上における植物の繁殖は、同化した炭素による有機物を堆積させ、大気と土壌を植物生育する…

杜子春ー空想の社会構造

はじめに 今、松尾芭蕉か杜子春のことを書こうかと迷っている。今についてか、過去の思い出なのか、しかし、過去の思い出も今にとっての過去なのだ。今という現実と過去の意識の関係であって、今の存在は意識なしに持続している。持続するから、意識があるの…

森林風致と公園施業

はじめに フォン・ザリッシュの森林美学において庭園と公園、森林美の区別がどこにあるか、公園における森林は森林美学の範疇に入るのか、林業、林学の一環として成立させようとした森林の美的取り扱い、森林美学とは何かが問題であった。公園に適用される森…

ブドウ棚

はじめに ブドウ棚は和風の住宅には似合わないだろう。藤棚は洋風の住宅には似合わないだろう。藤棚には竹が使われるからであろうか。しかし、洋風住宅が増えているのに、ブドウ棚を見かけることは少ない。「一房のぶどう」という随筆?を中学生の頃、読んだ…

生活空間と大気

はじめに 地表が大気に覆われており、地表で生活する人間はその大気を呼吸し、風を感じて生きている。大阪から来た友人は信州の空気は違うという。大都市の人口集中によって高密な居住地となり、大気汚染も生じていることから、都会の生活空間の空気が、地方…

露岩と植生被覆

はじめに 地表は岩石を骨格として、植生で被覆され、植生は岩石の風化した土砂に植生が作り出す有機質の混合した土壌に根を伸ばして生育する。岩石が直接むき出した露岩はそれ故に見ることは少ない。その露岩の断面は岩と土壌と植生の断面構造である。露岩の…

道路景観

はじめに 道路景観は土木分野の景観論の一部であり、観光道路、高速道路の建設の進展とともに、道路景観の問題がクローズアップされてきた。観光道路は道路外の景観が対象となる点で、観光計画の一環で道路からの景観が問題となり、塩田先生らによって阿蘇山…

森林は美しい

はじめに 車窓からの風景、山地はほとんど森林に覆われて、近くの木々が電車の進行とともに移動して見える。松枯れ病でみすぼらしい状態だった森林は、下層の様々な広葉樹が生育して、鮮やかな緑とその陰は豊かさを感じさせる。それを美しいというなら、多様…

森林と眺望

はじめに 森林は地形を被覆し、地形を骨格とした景観を樹高分だけ高め、林冠の凹凸は肌理と色彩を与える。しかし、より以上に、林内という視界が森林によって遮られ、森林によって構成された新たな空間を作り出す。塩田先生による眺望と囲繞の視覚的景観区分…

森林と景観

はじめに 個々の地域の景観の骨格は、地表の条件となる地形によって形成され、自然と人工、森林と土地利用の関係が判然と表示されている。地形の平坦さ、水利条件によって人の生活区域が限定され、人工景観要素の施設と農業のための土地利用に対して、人が利…

風景の自然美

はじめに 自然美と人工美は対比的に扱われ、芸術における人工こそが美であり、自然に美を感じるのは、美が存在するのではなく、美の意識で自然を見るからである。美の意識に適った自然を美としているだけなのである。このように自然美を解釈することもかのう…

空間の構造化−仮説の意識構造

はじめに 意識において予見としての仮説が組み立てられ、未知なる対象を仮説的に認識し、それと反する事実によって仮説を否定する仮設によって認識が深められるという、単純な弁証法の理解にとって、仮説の意義を認めている。事物の全体像の構造的理解は、一…

風景の模型(14)森林空間

はじめに 森林空間は樹木によって構成されている。樹木空間は幹と枝、葉によって構成されている。枝と葉は樹冠を構成している。その樹冠を幹が支えて傘のような樹木空間が生じる。この樹木空間が集合して森林空間が構成されるのだが、樹木空間の集合は隣接す…

伝説の風景

はじめに 人工の環境は自然環境と同様に、風化して自然とともになろうとする。人の使わなくなった施設は放棄され、廃墟となって自然の中に埋もれる。かって、どうであったかは、その廃墟から空想してみる他は無い。人が使い続けている環境でも、時とともに使…

美人林の写真家

はじめに 今日は佐藤一善さんの写真展を名古屋に見に行こうとしている。佐藤さんは松之山の写真家で、いや写真家というよりは師匠と呼ばれている。松之山の棚田とブナ林を写真によって世の広めた功労者である。 何度か松之山にお邪魔し、学生の専攻研究にも…

真実の風景

はじめに 風景画において画家がいかに真なるものを追求したか、ターナーやコンスタブルの伝記に詳しく記されている。ロマン主義から現実主義(リアリズム)へ、絵画における印象派の出現も真なるものへの追及の結果として、印象派を色彩や光学から説明する試…

時間の風景

はじめに 風景は場所、瞬間の知覚であれば、時間的な風景は無く、風景の変化があるというべきであろう。しかし、一瞬に時間の流れが含まれ、一瞬の連続が風景の変化とすれば、風景の中に風景の変化が含まれることになる。これは、空間的な場所の移動による風…