2011-01-01から1年間の記事一覧

封じられた風景または風景の変化

はじめに 20数年前に山村の観光開発問題で5つの町村に出かけたことがある。富士見町はその一つで八ヶ岳山麓と入笠山山麓に広がる長野県と山梨県との県境の町である。富士見峠から富士山が望んで感激したことがあった。富士見町には日本で最高位の標高1000m…

カオス混沌のダイナミックス動力学

はじめに 自己反省であるが、高齢となり、死が待っている未来に期待を持てないことに気がついていた。これは全く独りよがりな老人のナルシシズムである。過去の反省を取り返す未来を放棄し、社会体制の末端で生きて、社会の変化にも傍観者でいることは、社会…

放置再生林の危険

はじめに 松本近辺、公園内の森林でさえも、根返りによる倒木が目に付くようになった。これらの森林はニセアカシアが多いが、ケヤキなどでも見られないことではない。放置再生林自体は各所に見られ、広大な面積を占めていることが考えられる。里山が利用され…

生物多様性の低下と向上

はじめに 生物多様性が、地球上の生物種の減少から、その持続が大きな問題となる。しかし、植物の多様性の面から、種の多さが生物多様性なのか、よくわからないことが多い。どのような区域の中で、生物多様性の尺度があるのだろうか。地球全体の種数、日本全…

コナラ林の森林空間と時間

はじめに 長く過ごした場所で、森林の変化は著しいと感じるのは、歳をとったせいであろう。時代の変化と同じく、森林も変化しており、時代の変化が作用している。生駒には若い時から現在まで、年に1度も行かなかったときはない。若い時は昭和30年代であるの…

南アルプスと山間地の住民生活

はじめに 山岳地域は人々の生活できる場所を見出すことは難しく、豊富な資源を利用することも難しい。山間農村の居住地域は、利用してきた山地があり、奥に厳しい山岳地域とは隔てられている。山村地域の住民と山岳地域との交流はわずかであり、それ故に山岳…

風致間伐

はじめに 間伐について 森林環境が改変する上で、間伐は大きな影響、あるいは決定的な影響を与える。どのような間伐方法が森林の風致を向上させ、森林を持続させるのか、試行の状態が続いている。暗い林内を明るくする。繁茂して見通しの悪い林床を下刈する…

擬態

擬態とは周囲の環境に溶け込んでいること。 まるで、それが存在していないかのように。 しかし、存在し、生存しようとする限り、獲物を狙い、一時の憩いから飛び立つ。 ことさらに目立つ音を響かせるクマゲラ、 そのクマゲラを目にする人は何故かめったにい…

景観のための森林施業

はじめに 風致施業の提唱はいくつかの方法が示されているが、日本の実行例で著名な事業が、嵐山国有林の風致施業である。画伐作業によってアカマツ林の再生をはかり、アカマツと下層のヨシノザクラの景観の回復がその目的であった。森林遷移でアカマツの植林…

景観と経済

はじめに 景観計画は経済的にも、良好な環境か外部からの居住を促し、地域を経済的に発展させるというように、両立するものと考えられ、期待さされていた。しかし、現実的に工場誘致を行うのに、景観のための建設制限を行うことで障害が生じるという問題が生…

生活環境の恒常性と日常性

はじめに 道路を自動車で走行して同じ景色が連続していると、自動車は止まっているように感じられる。日常生活も日々変化が無いと、永遠に同じ生活が続いているように感じられる。日々、同じ時間に起き、同じ時間に決まった行動をしていれば、行動は習慣化し…

50年まえの北海道ガイドブック

はじめに 私が大学に入学したのが昭和35年だったから、今から50年前のことで、1960年日米安保改定が問題であった年で、高度経済成長のための所得倍増政策が開始された年だった。昨年、今年と北海道に出かけたが、学生の時代とは全く異なる北海道の様…

村から国への共同体論

はじめに 人間社会の共同体論については、マルクスや日本では大塚が論じてきた。歴史の基層をなす共同体がどのように移行したか、その共同体の移行とともにどのような上部構造たる国家が生起したか。今西は国の成立における共同体の構成を論じている。残念な…

新時代の到来

はじめに 日本のみならず、世界各地に危機的状況を見出すことができる。アフリカ、アラブ、EU、アメリカにおいて。これらの危機を乗り越えて新時代の到来は可能なのであろうか。既存の秩序が行き詰まり、危機はその行き詰まりから、生じているのに、その危機…

クリーンセンター、リサイクルセンター

はじめに ゴミ焼却場の設置は、該当地区の住民に環境悪化をもたらす点で設置反対の運動が起こることがある。しかし、現在の市民生活に不可欠のものであることは、誰しも理解を示し、分別回収にも協力を惜しまない人がほとんどである。以前は庭に焼却炉があり…

観光資源としての風景

はじめに 観光旅行の動機は、見知らぬ地域を体験したいということであろうが、日常生活を離れてゆっくり過ごしたいという保養の魅力もある。見知らぬ土地の体験は探検であり、その体験を報告することで発見の栄誉があるだろう。しかし、探検旅行は苦難が伴う…

景観とイメージ

はじめに イメージは心に描かれる視覚像であり、現実の知覚によってその相違が是正されて真実の知覚が確信される。現実に知覚されない限りは、イメージであり、それは幻想かもしれないという懐疑の中に置かれている。現実に知覚している対象でも、一瞬の知覚…

津波から残った海岸林

はじめに 陸前高田の被害は凄まじいものだった。災害の跡を訪れて、普段外海の波を和らげる湾の地形が、津波の力を増幅して大きな破壊力を発揮したことを実感した。内海に面して安全と考えて暮らしてきた市街地の人々、その市街の無残な変わりようは、人々の…

庭園と花壇

はじめに 園芸と造園の協力は大阪花博で見られるが、庭園に花壇をつくるのに違和感がある。花壇は洋風のもので、日本庭園には合わないからなのであろうか、ほとんど日本庭園で花壇を見かけたことはない。花壇ではなく野草園としててなら日本庭園にも見られの…

近郊の里山

はじめに 松本市街に近接して農村地域が広がり、北と東、南は山間地につながっている。先日、北の地域まで車で出かけた。山林を使っても良いと言う人を紹介してもらったからである。山林の所有者は北の地域が故郷で学歴を積んで、専門家として活躍し、現在は…

景観計画における農地と森林の役割

はじめに 景観は自然環境を利用して生活する人間の生活環境の広がりによって成立している。生活環境の広がりに対して残された自然環境が対置された地表の状態が景観を形成している。生活環境の形成と自然環境の保全の両立が景観計画を成立させることになる。…

駒ヶ根市の景観特徴

はじめに 地方都市の多くが、全国的な大規模店の展開、建物材料の流通、プレハブ住宅などの規格化、生活様式の画一化によって、地域の個性を喪失させている。市街の拡散は景観の地形的特徴とともに歴史的に形成された生活環境の特徴を覆い隠してしまっている…

原生林の恒続

はじめに 春日山原生林、伊勢神宮の境内林、南アルプスの亜高山帯針葉樹林、野幌森林公園の原生林、知床の原生林は、正確には原生林ではないにしても、原生林に近い森林であるとは言えるだろう。これらの森林を見てきて、原生林とは何かと考えてみた。原生林…

風景から風致へ

はじめに 日常使われている言葉には、意味がある。あるいは、日常生活を意味づけるために言語の体系が存在していることが予感される。予感されるというのは、誰もその体系を明らかにすることができないからだ。空気を見ようとしても見えないように、言葉の全…

山林と地域生活

はじめに 山林と地域の配置関係を、山林に囲まれた地域、山林に接する地域、地域の中の山林の3つの関係に区分できるが、これは農村が平坦地に開かれ、山地には森林が残されるという地形的条件によるものである。駒ヶ根市の場合、天竜川を挟んで東西に分けら…

コナラ林の理解

はじめに ススキ草原からアカマツ林へアカマツ林からコナラ林への遷移へと、戦後の山地利用の衰退とともに、森林へ遷移が進んできたことは、実感されることである。自分の故郷ばかりでなく、全国各地に同じ変化が生じていることは、単なる自然の変化としては…

信州の草原と鹿

はじめに 小山さんから「信州の草原」を頂いてから、大分、日が過ぎてしまった。「山と森の環境史」もいただいたのだが、まだ、読む余裕がなかった。今日、「信州の草原」の小山さんの担当した「長野県におけるニホンジカの盛衰」の項を読むことができた。 …

地域景観の個性

はじめに 各市町村の概要には、その市町村の特色が書かれている。骨格としての自然環境、構成する要素としての産業・土地利用や生活・施設、歴史などであり、景観の特徴として、理想的な生活空間が示される。山紫水明、類い稀な中心となる景観などである。 …

草原の思い出

はじめに 草原の思い出は大学に入った頃、両親と妹の4人で登った美ヶ原である。武石村の登山口までバスできて、そこから台上まで歩いて登った。暑い日、汗だらけになったが、台上は涼しい風が吹き抜け、休んでいる人々の仲間になった。はるかな見晴らしは空…

景観計画の谷間

はじめに 地方都市住民の長年の景観形成のための活動は、景観に関する住民意識を著しく高めていることを、駒ヶ根市景観計画策定委員会に参加して実感した。景観住民協定を締結した地区では景観保全の実効が上がっている。しかし、一方、協定が結ばれていない…