2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

デカンショ

はじめに デカンショ節を御存知の方は多いだろう。私も学生時代に歌っていた。しかし、それが哲学者の名前に由来していたことは分かっていたのであるが、哲学史の上でどのような役割を担っていたのかは理解していなかった。戦前の学生は哲学書に親しんでいた…

森林保護

はじめに 自然保護運動に関わってきたが、開発の進展に対する反対であった。開発は資本主義社会では、多くが経済的目的で行われる。開発によって環境が改変され、これまであった自然環境が失われ、自然環境に結びついた地域環境を変化させる。開発が資本の投…

戸外環境

はじめに 戸内と戸外は、人工と自然と同様に対比的な言葉であるが、環境として対比的に存在しているわけではない。全体と部分との関係でもない。戸内は建築の内部にいる状態を示し、これに対する外部を戸外とするが、人為とすれば、広い土地を選択し、敷地を…

原体験と原風景

はじめに われわれは小さな頃からの経験を積み重ねて生きている。そうした経験の積み重ねのなかで、現在の行動形態や性格に影響している経験を原体験と言ってよいのであろう。奥野健男:文学における原風景は、文学者の作品が作家の経験に基づいて書かれてい…

郷土保護

はじめに 1900年代初頭のドイツで郷土保護運動が展開したという。J.ヘルマント編著・山縣光晶訳:「森なしには生きられない」によれば、19世紀初期の工業化によって変わり行く郷土風景の美的価値と改良に対する音楽家ルドルフの主張(1880)によって郷土保護…

広場空間から場所の構造

はじめに 1960年は大学に進学した年であったが、安保紛争のさなかにあった。学生運動も盛んであったが、強行採決によって急速に運動は終焉した。その10年後の安保改定に反対運動が再燃し、大学紛争へと到った。こうした大衆運動は個人の社会的自覚に基づく民…

日本の庭ことはじめ4 庭のデザイン論

はじめに 岡田さんの著書は、多くの場所で論評され、ブログにも数十件以上で論壇されている。この詳しい分析はこれからであるが、これまでになかった庭園論として造園業界の範囲を越え、一般の庭趣味の深い人々、環境デザインの多くの分野からの評価が見られ…

山の風景 山林の模様

はじめに 山と神社は森に結びついており、山の森は山林と呼ばれる。平地の多くが農地や宅地として開発されて森林が残りえなかったためであろう。平地に残る斜面にはわずかな樹林が成立し、集落の中心の神社や寺院には境内林が点在する。山地と平地は谷の平地…

山の風景

はじめに 都市を取り囲む山地は、都市の風景にとって背景となる。山の背景がなければ、都市はただ人工物の集積した殺風景な姿である。しかし、空に広がる風景にとって山は主役であり、都市は前景に過ぎない。山によって都市の風景は特徴付けられている。はる…

イギリス庭園

はじめに イギリス風景式庭園の源流が中国か東洋にあるのではないかという論議は古くよりなされている。中国や日本の自然のような庭に西洋人は西洋人が感じられなかった美があることに気づいた。その美は「しゃらわじ」という特別の言葉で表わされることも論…

日本の庭ことはじめ3

はじめに 岡田さんが日本の庭で語ろうとすることを直接聞かせていただくためにお時間を頂いた。庭として印象づけられるような造園空間についていくつかの岡田さんの経験から話があった。その庭は地下水脈につながって、自然の根源を感じさせる井戸がある空間…

松之山 キョロロ館の展開

はじめに 松之山キョロロ館は十日町市への合併以前に松之山町が地域の起死回生をかけた事業として建設した施設と考えられる。それを博物館としての体制を整えていく上で、研究員として勤めた若い研究者の役割が大きかったといえる。その研究者をまとめて地域…

松之山 美人林

松之山の森林はブナ林が特徴的的である。中でも美人林は多くの写真家をひきつけている。今日はキョロロ館を訪ね、近くの美人林を歩いた。雪の中のブナ林は歩くことに何の邪魔にもならず、ただ天空に手を差し伸べる様な梢や樹冠を軽々と支えているだけのよう…

クヌギ林

はじめに 松本の斜面樹林には、ニセアカシアとともにクヌギが多いようである。クヌギはすらりと背が高く、枝は天空に向かってほうき状の樹形となっている。幹は濃い灰色で、網の目の樹皮である。葉はクリの葉のように船形で、実は突起のある厚い皮で覆われ、…

森林美学の背景(1)

はじめに フォン・ザリッシュの「森林美学」第一版が1891年に出されているが、森林の美を明らかにしようとした著者の教養の土台は何であったのであろう。先人の林学者ハルティッヒなどから学んだことが著書の中に上げられ、著者自身が森林管理の実務に従事し…

ダーウィン「進化論」の影響

はじめに ダーウィン「進化論」の影響が絶大なものであることは言を待たないことであるが、恒続林思想における森林生態の考えに作用していることを著者のメーラーが明記していることや、ギブソンの生態心理学の分野にまで影響していることを知って、現代に到…