2012-01-01から1年間の記事一覧

天然林の施業

はじめに 天然林は人工の手が入らない自然林として成立した森林といえます。これに対して人工林は植林し、施業を行う森林として成立させた森林です。天然林で木材を収穫し、森林更新をして持続的に利用する場合に、天然林は天然林とは言えなくなりますが、植…

南アルプスの景観の価値

はじめに 南アルプスの山地は赤石山脈と呼ばれ、伊那谷、中央アルプス山麓の各所から一望される。しかし、南アルプスと伊那山脈の中央構造線の渓谷からは、山間の中でかいま見る山岳の一部を望見するのみである。山地は山梨県、静岡県に広がっているが、南ア…

自然に従う森林施業

はじめに 合自然的林業の表題の赤井龍男先生の著書があり、赤井先生は最近の講演で従自然の森づくりの表題を掲げられた。自然に従う森林施業をインターネットで検索して、そのような森林施業は見当たらないことに気づかされた。工業は自然に逆らい、農業は自…

経ヶ岳自然植物園の風致間伐

はじめに 経ヶ岳自然植物園の開設から相当時間が過ぎ、林木が成長して、次第に林冠が閉鎖している。草地の広場にはススキ草原を構成する野草の宝庫であるが、上層の閉鎖で狭まる可能性がある。草地はエドヒガンザクラが数本とシランバの樹林があり、広場に面…

燃えない薪と使われない暖炉

はじめに 9月17日生駒で森づくりフォーラムが行われた。森づくりは赤井先生の生涯をかけて取り組んできた内容の講演が放置林の有り様に大きな転換をもたらす予兆を示した。大阪の都市民にとって森林環境の存在が大きな意義を持つものであることを、中嶋先…

造園学原論覚書2

承前公共空間 公共空間も生活空間であるには違いない。しかし、個人の生活空間ではなく、産業活動、個人の生活空間の集積し、個人の行動を制限する公衆の空間である。公衆(public)と民衆(people)とは相違している。群衆とも相違し、いずれも大衆とは区別が…

造園学原論覚書1

はじめに 造園学の原論は、造園学の出発をなす時期に田村剛によって書かれている。しかし、その後に、造園学原論が論じられることはなく、未だに造園とは何かの共通認識は不明確ではないのだろうか。これは諸説が生まれ、議論が噛み合わないことに現れている…

現在の森林衰退

はじめに 森林の衰退は、森林破壊による場合と森林が成長から衰退に転換する場合がある。森林破壊は人為的な開発による場合と風水害や土砂崩壊による場合がある。森林の衰退への転換は病虫害による場合と森林更新による場合とがある。大きな自然災害による森…

森林公園の盛衰

はじめに 明治百周年記念事業、各都道府県百周年記念事業に多くの森林公園が生まれた。高度経済成長期の成果の上がった時期に何故、森林公園が取り上げられたのであろうか?都市住民のレクリエーション増大がまず、その要因であることは確かである。外材導入…

緑陰の効果

はじめに 厳しい日差しの中の散歩は汗まみれとなる。熱せられた地面に風も熱波となって苦しい。こんな時に散歩する人はいない。しかし、家の中も外気の暑さで冷房に頼らざるを得なくなる。夜までも昼の暑さが残る。 そんな時、果樹園の中に残された1本の大…

造園の価値観の相違

公共施設の前庭の修景整備の計画が完了し、見に行った。事務長は管理に様々ん意見があり、どうしたら良いかと判断を求めた。サツキの群植を刈り込むことを造園業者が推奨し、丸い整形的な刈込に多額の費用が算定された。また、花壇を作っている園芸グループ…

森林施業の成立要因

はじめに 放置林が増大する中で、森林施業が行われる林地が中々目につかない。施業の諸段階として、収穫すなわち皆伐の状態を見かけることがあるが、植林の山地はほとんどみかけず、幼齢林も微々たるものである。保育の段階で間伐の山地は比較的多く見出され…

背景としての景観

はじめに 遥かな昔、幼い頃の思い出は、忘れられ、孤独な死とともに消失していくが、日常生活に無関係なものとして消失させているのかも知れない。しかし、個々の人々の現在は過去の生活の流れの一端であり、死が人生の終結である点で、生きている限り、忘れ…

景観の外面と内面

はじめに 日々目にする景観は地表面の現象であり、現象が投影された地表面の形態といえる。地表面に生じた形態となる景観が現象の外面であるのに対して、現象そのものは景観の内面ということになる。とすれば、景観の内面となる現象がどのように生じるのか、…

景気とは

はじめに なんと古き良き卒業生から景気が低迷しているので、自分の仕事ができると作品の写真を送ってきた。安藤広重の風の模型ときた。風雨に逆らって道行人、風雨に押されて駆ける人が橋の上とたもとにいる。風に柳がたなびいている。これは何を意味してい…

景観計画の基盤

はじめに 景観は年々変化している。森林の放置と成長、農地の減少、住宅地の縮小、市街の空洞化などが目に付くことになった。この原因は農業の衰退、人口の高齢化と減少、経済活動の停滞によるものであることは間違いないだろう。 景観計画は、これまで、景…

生活空間のイメージ

はじめに 生活は日々の行動の全体によって構成されており、個々の行動の知覚が生活に統合されて、生活空間の全体像に意識化されるのであろう。意識化された生活空間は視覚的なイメージで部分と全体が統合されている。現代は写真、ビデオなどの記録が、行動空…

生物空間の場所の構造

はじめに 個々の生物にとって生活の場所が構成され生存している。生物は多くの種に分類され、それぞれ特有の形態をもって生活している。多様な種によって生物空間の有機的関係が生み出される。それぞれの生物は生活範囲が相違し、その生活は周期性をもって生…

場所と地霊

はじめに 鈴木博之「東京の地霊」は地霊がラテン語のゲニウス・ロキの訳としてながら、それを東京の各所の場所−土地の歴史に当てはめた。この考えは、田中正大の「東京の公園」によっても受け継がれた。土地の歴史はその場所の条件によってある必然的な運命…

林木の保育と森林の保育

はじめに 「森林保育」は林業上の作業として行われ、四手井先生の著書「森林保育と生態」もある。森林保育は植林、下刈り、つる切り、除伐、間伐などの各種の作業によって構成される林業上の林木育成のための作業である。最終的な林木の収穫を期待して森林保…

剪定ハサミの森林保育

はじめに 山に行くのに剪定ハサミを持っていく。ナタや鎌で藪を切り開くには、ナタは藪を払うには小範囲で、切れなくなった鎌は藪を払えなくなる。より以上に藪を構成する樹木をやたらに切って、残しておきたい木まで切ってしまう。全ての藪を切り開く下刈を…

計画の構造

はじめに 自治体行政に様々な事業と計画が盛り込まれている。その計画の構成は基本構想、基本計画、実施計画で構成されている。個人の行為を一つの事業とすれば、目的を検討する思考と目的を決めて行動の過程を予定として想定する段階、実際に行動する段階に…

都市空間と森林

はじめに 日本の都市は周辺の農村や森林との境界は明確とはいえないことは確かであろう。都市計画区域、市街化区域と市街化調整区域が都市の範囲を示す境界とも言えない。都市は市街で覆われた区域と言ってもよいが、近郊地域では農村部に向かって市街が拡大…

見られる景観・見る景観

はじめに 市町村で景観計画が作られている所が増えている。景観計画は住民の生活環境向上の一部を担うが、それによって来訪者の好感に役立ち、来訪者を増大させることになれば、観光産業の経済効果にも役立つ。景観が景観要素で構成され、景観の範囲に単位か…

森林の利用と風致育成

はじめに ある人に森林を借用して利用したいと申し入れをしている。ただ、利用するだけでは借地の問題である。利用する目的が利益を上げることができなければ、借地料を払うことはできないので、所有者に還元できる利益が何かが問題である。 放置されて荒廃…

日常生活と森林との結合

はじめに 森林に出かけるとその多様で変化する環境は、季節の変化とともに五感を刺激し、様々な興味を呼び覚ます。懐かしい植物や鳥や虫が小さな頃の驚きを再現する。しかし、出かけて戻ってくる場所は日常生活の場である。庭や鉢に森林からもらってきた植物…

駅前の明暗

はじめに 北九州市は5都市が合併してできた都市である。その中心は新幹線の駅がある小倉であろう。新幹線小倉から在来線で戸畑までやってきた。戸畑駅の正面を出ていつも来た駅前の様子との違いに驚いた。あわてて船着場に行くにはどうすれば良いかと道行く…

中庭の自然空間

はじめに 造園は自然の力を借りて戸外生活空間を作ることになり、人工空間でありながら自然環境を作り出す。造園空間の管理は人工空間の自然環境を維持するために人工的な管理を行うことになる。庭園の中で自然の変化に対して人工の再現が常に行われることに…

景観の創造と保育

はじめに 地域景観協議会開催の通知が届いた。毎年一回だけの協議会は1年間の計画の実績報告と本年度の計画決定のために開かれる。地域の8市町村の景観関係者と関係諸団体によって構成されている。景観協議会の萌芽的な組織は長野県冬季オリンピック開催を…

風の波

はじめに 強い風は方向を持った空気の塊が当たるように体に感じる。空気の中にまた空気の塊があって走り抜けるのであろうか。固い壁に当たると、壁を避けるように横や上に方向を変える。目には見えないけれど、風は走り抜ける空気の塊なのだろうか。木立に当…