場所と場面の構造 災害の危険

 伊那谷活断層の危険について北澤先生の講演が行われた。地殻変動と地質構造、地形形成の年代的な変遷の一端に現状の地形があり、活断層による直下型地震の痕跡は発見されていないが、東南海沖地震の発生の可能性は大きく、その影響は伊那谷に及ぶことは必至であるとのことである。人類の160万年の進化、文明の数千年の過程は、地殻変動における地質形成からすれば、瞬時に過ぎない。しかし、微視的には変わらない地形、地質も数十年、数百年の変化の蓄積や変動は、人々の生活に深刻な災害となって影響する。しかし、急峻な地形、軟弱な地質における土砂崩壊の危険と洪水の危険は、防災工事と流域管理によって、減退しているとのことである。
 自然災害は、自然現象が人間に災害として影響を与えるものであるが、防災は、自然現象を変化させ、人間に対する影響を緩和させようとするものなのであろう。しかし、自然現象を変化させた結果、人間の土地利用が変わり、人間への影響は緩和しない結果となる。という新たな関係が進展していくことが生じる。人間自身が自然に関与することによって、災害もまた人間と自然の相互関係という以上に、人間と人為との相互関係が災害の問題であるともいえるのであろう。