道路景観と森林景観

はじめに
 道路に自動車が見られなかった時代、都市内の街路は都市景観そのものであり、街路は建物の構成によって視界が開かれ、街路に面する建物の前面は、外観が景観に考慮された。また、街路は開放的な空間として享受され、緑陰と見通しのために並木が配置された。郊外に延びる道路は地形に沿って蛇行したが、農地のより開放的な空間に溶け込むものであった。
 道路に自動車が走り、自動車道路として整備されるようになると、歩行者との対立的関係が問題となった。結局分離せざるを得なかったのである。郊外に延びる自動車道路の交通量は増大し、整備が加速されると、自動車道路としての標識、信号、安全、ガードレールなどどこでも同じ景観が占めるようになり、幅員の拡大と路線の直線化によって地形を破壊し、切取り法面によって人工的な前景が目立つものとなった。この改善のために土木分野における景観計画の概念が生まれた。一方、自動車が新たな交通手段として普及すると観光道路という概念も生まれた。広大な眺望の中に進入し、閉鎖的な景観を切り開くと、自動車の走行とともに新たな楽しみが生じることになる。広大な眺望を求めて高原や山岳地域に観光道路の建設が見られた。
 山地の道路は林業用の道路として林道と呼ばれる。作業のための到達手段、木材の搬出に林道は欠かせないものとなり、林道網として森林をカバーする整備が進められた。林業用としては自動車の通行に必要な復員と傾斜が確保されれば良かったが、大面積の施業には幹線道路の接合や、整備が必要とされるようになると、一般交通や観光利用と併用さるようになった。簡易な林道から大規模な自動車道路となるにつれて、山地の地形改変が大きくなり、道路整備の費用も増大する。地形への破壊的影響を少なくし、自動車の走行のための直線化にとって、谷、尾根の等高線を橋とトンネルで通過することが最適である。しかし、そうでなければ、大規模な尾根の切取りと谷への盛土が必要となる。幅員が広ければ広いほど、より直線化しようとすればするほど、地形が急峻であればあるほど、この地形改変は増大する。

山岳地域の道路景観
森林景観の破壊と回復