森林の利用と風致育成

はじめに
 ある人に森林を借用して利用したいと申し入れをしている。ただ、利用するだけでは借地の問題である。利用する目的が利益を上げることができなければ、借地料を払うことはできないので、所有者に還元できる利益が何かが問題である。
 放置されて荒廃した森林を手入れし、将来の収入が見込める森林に育成するならば、所有者には利益である。育林補助などを目当てに森林の手入れを代行することは林業事業体で行われている。この場合、林業事業体と所有者の利益が同時に成立する。育林補助が無くても手入れによる林地残材を利用すことによってもこれは可能である。しかし、森林の手入れの費用を育林補助や林地残材の利用で充足できるかが問題である。充足できるように、手入れの費用をできるだけかからないことも必要となる。

放置人工林の転換による森林育成の提言
 お借りする森林の作業は、林地残材を片付け、また、育成する樹木を選定して支障となる木の除伐を行い、また、下層の植物を繁茂させ、林相を単純林から混交林に、単層から複層に転換させます。林木の健全な成長を間伐によって促進し、下層の繁茂による更新と混交林への導入し、持続する高齢の森林づくりを目標とします。
 従来の間伐では林冠が閉鎖するにつれて、繰り返して間伐が必要になりますが、自然林では自然淘汰として密度が調節されます。これは林木の多様な形状、樹種が混生しているためです。持続する森林づくりは自然林の成長がモデルになります。当初の林相の改良によって自然の林型への移行が達成できれば、皆伐による人工林の繰り返される間伐は必要がなくなります。収穫は高齢となった木から行い、その収穫によって更新地が確保されます。また、森林の自然は多様で豊かなものとなります。