都市空間と森林

はじめに
 日本の都市は周辺の農村や森林との境界は明確とはいえないことは確かであろう。都市計画区域、市街化区域と市街化調整区域が都市の範囲を示す境界とも言えない。都市は市街で覆われた区域と言ってもよいが、近郊地域では農村部に向かって市街が拡大し、やがて、市街の中に農地が取り残された状態へと移行する。都市は決まった空間ではなく、成長する生物体のように拡大していく。
 山地は一時的な障壁となるが、その山地さえも地形を改変して、山麓から山腹へと拡大する。山地の森林は市街に接して、生活空間の一部となるようにも考えられるが、そうはならない場合が多い。うまくいけば緑に満ちた都市空間も可能となりうるかもしれない。
 日本の個々の経済活動の集積として生物体のように拡大する都市空間は、農村空間や森林空間を破壊して成立し、緑の都市あるいは田園都市の理想に近づく方法を見いだせないのが実情ではないだろうか?都市計画は未来を空想して設定され、限られた規制によって空想の実現に誘導しようとする。しかし、個々の経済活動はその空想にほころびを与え、混乱が生じる。

都市空間と農村空間
 農村空間にとって都市空間の拡大は衰退の要因以外の何ものでもない。蚕食され、都市郊外は農村空間が都市に飲み込まれていく傷口である。

森林空間と都市空間
 農村空間に連結した森林は、農村の衰退によって利用されなくなる。しかし、自然の山地が都市空間の拡大の一時的な障害となり、都市空間に近接して残存することが生じる。しかし、利用されなくなり、放置された森林空間は人々の侵入を遮断する。