イメージの力

はじめに
 盛口さんは海外の博物館関係の研修生を受け入れて景観の模型の作成を指導している。長年、研修生を受け入れてきたので、世界中からの研修生がそれぞれの思い出深い風景を景観模型として作り出し、それは壮観という他は無い。
 昨年は盛口さん自身による森林の模型を作り出し、展示が行われた。蔵王広葉樹林に目が止まり、風衝の樹形が群れをなして、厳しい自然の景観を表現している。1本づつの樹形が相違して森の姿が出来上がったいるのだ。
 後で現地の森林を調べて作っているのかと聞いてみると、写真からの想像だと言うのである。森林の構造の複雑な構成の理解に悩まされている私には、何と軽々と表現した森林の模型に天才の力を感じた。しかし、研修生ができたことなのである。

イメージの力
 森林に接触して森林を感じたところに、森林のイメージが生じる。そのイメージを絵画であれ、模型であれ、文章であれ、そのイメージを表現するところに、現実の森林自体の理解が生まれている。その理解が一面的であったにしても、イメージを形に表現するとき、現実の森の一面が再現する。イメージの中で森林を追体験し、その形がなぜ生じるのかが考察される。現実の感覚が論理となって形が構築されてくる。樹木は幹から枝を伸ばして樹冠を構成し、樹冠は隣接する樹冠との関係で変形する。地形によって樹木の形が相違し、風によって傾く。
 何かの創造には創造しようとする人のイメージが働いている。固定的なイメージではなく、創造を深め、修正していくに連れて、イメージが変化し、創造とイメージが融合して、イメージが創造物となって表現される。ヘーゲル流に言うならば、意識の外化と言うことであるのだろう。