庭から生活空間へ

はじめに
 田村の造園概論は日本の造園学発祥の時代に出されているにも関わらず、造園学に原論の不在が嘆かれて久しい。田村の造園学は一般の造園の実践が成熟せず、和風庭園から戸外室への転換が庭の様式として考えられる留まっていたことによるのではないだろうか?戦後、特に高度成長期には、都市拡大とともに生活空間の形成の論議が頻繁となり、造園も生活空間を担う技術であることが提唱されたことがある。
 しかし、実際の造園の公共事業は、1970年代に進展し、公共造園が増大し、従来の造園業とは異なる領域を形成するようになった。庭と公園は異質に並列するもので、その結合を見出すことができないでいる。公園の中に庭園を造り、異質な管理がなされていることも見られる。庭園の管理が滞った時に、悲惨な結果が生じることになる。縮景式の日本庭園が公園にあることが管理の困難な事態を招くことは当然であった。
 現在、人口減少が深刻化し、経済が停滞する中で、新たな生活空間の模索が必要とされていると考える。狭小な住宅で十分囲障を回らせないことも多く、庭が開放的な形態に変化している点があるが、それが公共的景観を形成していることは気づかれていない。すでに、戸外に新たな生活空間の必要が現実化してきていると考える。