植生遷移と天然林の構造

はじめに
 森林構造と森林遷移との関係に以前より理解ができないでいた。森林構造は空間構造であり、林学の立場で使われ、森林遷移は時間的変化として生態学で問題とされる。この両者がどのように接点があるかという疑問である。人工林の空間構造は植林し、手入れすることによって、空間構造が成立し、空間の時間的変化が設定されている。これは論理的なあるいは工学的な仕組みであり、生態学では問題とされることはないのかもしれない。生態学で問題とされるのは天然林であり、存在する空間構造を明らかにし、遷移の仕組みが問題となる。一方が演繹的な探求であり、一方が帰納法的な探求ということであろうか。人工林と天然林が対比的な存在であり、森林構造と森林遷移、空間と時間を結合させない点での私の疑問の原因であったのであろうか。

植生遷移と天然林
 植生遷移は裸地から出発し、森林の終局にまで到達し、その終局相が循環的に持続する天然林に到達するという時間的な変化のモデルと理解する。しかし、その出発点は、逆に天然林の被覆があり、それが破壊されて生じたものであり、気象害による森林破壊は終局相の循環と考え、土砂の変動による森林破壊からの森林再生を循環の一端とは見なかったためであるのではないだろうか。

天然林の構造
 天然林の空間構造が人工林と相違する点は垂直に多層であり、平面的に変化があることである。平面的変化は、時間的に相違する空間構造によるものと考えられる。森林生態学でいうパッチの変化がギャップを伴っていることだろう。森林のギャップは森林更新を促し、その時間的に相違する生成がパッチの多様さを生み出している。ギャップは部分的な森林破壊であり、森林の老朽化と風害によって生じる。

天然林内の植生遷移と森林構造
 天然林の部分的破壊は長期に見れば常時生じる現象であり、持続的な森林の多様な空間の循環的な変化の一端といえるだろう。