風致を造園する方法論Ⅱ続き(住宅庭)

 新田のメタボリズムの造園への適用の考えに基づけば、人間ー生活と戸外ー自然環境の循環関係によって進展するのは、生活ーレクリエーションにおける快適性と自然環境ー光、大気、土地要因による環境形成との交互関係と理解することができる。田村の住宅庭の機能は自然環境の形態によって実現することになる。生活スタイルが機能的に住居と庭の連続した環境として成立したところに人と自然の心理的な交流である風致が実現しているといえる。機能的な環境ー戸外室は田村に依拠するとして、住宅庭の空間とそこに風致を体現する自然環境について考察を進めたい。
 住宅庭の空間は狭小な敷地に境界を持ち、住居に面して、天空を天井とする空間である。その空間に地面、天空の光、大気の要因によって環境を成立させた所が住宅庭である。敷地に住居の建物が建てられたばかりの段階では、敷地だけで住宅としての空間が成立していない。やがて、あるいは住居の建設と同時に機能性と快適性を実現する戸外空間の形成に着手するだろう。
 自然環境の実現として考えると、敷地の地面は自然の要素であり、植物を生育させるポテンシャルをもっている。何もしない状態で自然が実現しており、植物の生育によって自然は回復するのである。陽光や水分要素を含む大気の作用も自然であり、自然の回復を助ける要因である。敷地の条件によっては既に植物が存在し、生育している場合もあるであろう。敷地造成以前の土地は地表の一部として表土を持ち、植物を生育させていた環境であったといえる。この土地のポテンシャルを見るところに、造園における自然との対自が開始する。敷地造成以前の自然環境を残して利用する方法もあり、土地造成後に植林を行い、自然の回復をまって住宅の建設に向かうことまで考えられていることもある。(オランダ、フランスなどで)極言すれば、自然環境、森林のなかを住宅地とすれば庭の自然環境の実現は労せずしてできることになる。この場合は住宅の立地選定が基本的問題となる。自然環境の特徴―質は、地形的条件を基盤とするものであり、地形的条件によっては、敷地外に開かれた眺望を手に入れることができる。自然を選択するセンスは、それ自体、風致を見極めて庭の環境として実現する素地であるといえる。選択した自然環境の持つ循環の中に居住の場所を挿入し、居住ー自然の循環による生活スタイル、これが極論的な風致を造園する方法論といえるのではないかと考える。しかし、狭小な敷地、それを集合した住宅地開発において、自然環境の選択の余地は非常に少ないといえる。しかし、そうした中であたかも自然環境を選択したかのような環境を創造することが必要となるのである。
 地表の広がりに展開する自然環境と人工的環境(都市・農村)は眺望における風景として知覚している。風景の対象となる地表の状態が「景観」であるが、景観の中に自然と人工の関係を見出すことができ、様々な自然の状態の展開を見るのである。人の介在する半自然の状態の農地の広がり、山林、地形に即した山地と渓谷、草原や森林などである。言わば自然に関する本の目次のようなものである。それぞれの自然の場所に出かけて体験し、どんな要素によって空間が構成され、環境の機構として成立し、循環的に変化、持続しているものであるかの認識を深めることであり、住居の立地選定と同様の過程であるが、場所に制限されないイメージの自由な選択である。こうした経験と認識は、風致の意識を深めることになる。深められた風致の意識のもとに、自然環境が選択され、庭に風致が導入されるといえる。