場所と場面の構造

 私の住居の前に霊園が広がり、それを超えて市街の景観を展望できる。霊園を日々見ていると朝の散歩、通学、墓の工事、清掃、閑散として烏が墓にとまり、また、鳶が空を舞う。また彼岸などの日には大勢の人が朝早くから墓を掃除し、花を供えて手を合わせている。また、ある時は数人の人が新しい墓のお参りにやってくる。霊園のこの場所に様々な人の場面が生まれている。人だけでなく、鳥や虫などの動物にとっての場面が生じる。こうした様々な場面が生起する場所を私は日々の場面として鳥瞰していることになる。
 霊園は明治末に市営の霊園として設置されたものであり、都市発展とともに増大していく人口に対応して設けられたものといえる。人々のの動きまでは見えない市街も都市の広がりのもとで様々な場所を集合した眺めといえる。その場所に出かけて、その場所は自分の場面となり、そこにいる人々のそれぞれの場面となっている。場所の構成は都市の空間構造として成立しており、その空間構造の認識によって場所を選択して人々は行動している。行動して出向いた状態においてその場所が場面の行動空間となる。個々の人々の行動は、生活構造を成立させているといえる。生活構造は居住を中心した行動圏を範囲とする空間構造であり、必要な場所の選択によって成立している。
 場所の構造としての都市空間、場面の構造としての個々の生活空間、生活空間の場面が場所に結びついて、場所における人々の行動が現象する。一方、場所の構造が、人々の行動を制約し、方向付けている。

場所の心理学 THE PSYCOLOGY OF PLACE  David Canter     1980
デイヴィッド・カンター 宮田紀元・内田茂訳       彰国社1982
 上記の本をこれから読もうとしている。環境心理学の進展と環境の単位としての場所への注目がこの著書を成立させた。