森林公園の風致施業 藪の評価

 大芝公園林の低木層や林縁植生が刈り払われていれていく。アカマツ−ヒノキの二段林施業が行われてきた南箕輪村有林の間伐が行われたのは数年前である。保健保安林に指定して生活環境保全林整備事業が行われ、そこに住民団体として参加した。施業林から放置されて10年間を経過し、新たな方針のもとに森林整備をはかることになった。主に歩道の設定と間伐による森林育成に関して、積極的に参加し、提言を行ってきた。歩道のコースは知覚空間の設定として微地形と立木の配置状態を組み込んで実地の体験のもとで行うこと。間伐は森林の生育状態を各小林分の森林構造から読み取り、生育の促進となる間伐によって小林分の森林の個性を発揮させることを目指した。その結果、小林分の樹林の特徴がモザイク状に入り組んだ多様な森林が構成されることになった。(数十年生のアカマツ林で部分的にヒノキの低木樹群が混生した林分であった。小林分単位の間伐を実施し、下層の状態は上層の樹林構成に従がって、繁茂する場所、抑制された場所の変化を増大させた。しかし、一様に下刈されてしまった。)
 年数を経過するにつれて、上層木の構成変化は下層植生の変化となって現れてきた。林床植生は低木層となって様々な種類の林木が成育し、互いに密生して競争関係にある藪が形成されてきたのである。間伐以前から林縁部にはこうした藪が見られ、道路際の森林管理のために頻繁に刈り払われ、低木層の樹木が見られなくなっていた。明るい林縁は刈り払っても切り株から再生し、草本類の繁茂も著しく、これらの藪が維持されてきた。しかし、林冠の閉鎖した林内では藪の再生は困難であり、藪で苦労した森林管理からは一度刈り払えば、長期的に労働から開放されることになる。間伐は林冠の閉鎖を緩和することになり、下層植生の再生を一時的に復活させ、藪を生み出すことになった。しかし、それは一時のことに過ぎない、藪の内部の樹木は競争し、生育に連れて疎となって亜高木層を形成するようになる。同時に高木層の成長で林冠が再度閉鎖され、藪はなくなってしまう。さらに、過密な人工林の林冠の閉鎖の持続はやがて、下層の樹木を枯死させ、林床を裸地にまで至る。林冠が開放された場所をギャップ(穴)というが、閉鎖を持続させず、亜高木層の成育を図って森林を更新させるためにはギャップを維持しておく必要がある。これらを予想して多様な小林分にギャップを加えた間伐を行っていたのであるが、折角、繁茂した藪を競争によって整理されることを待たずして刈り払いに踏み切ってしまったのである。(写真は百年生アカマツとヒノキの二段林に間伐した結果、低木層の繁茂が見られるようになった。しかし、二週間後にはこの低木層は刈り払われた。)
 多くの人は藪を憎む。見通しがきかず、閉鎖した空間に閉じ込められたと感じるからであろうか。藪を作らないためには閉鎖した林分のままにしておくことである。歩道の林縁は早期に林冠を閉鎖させて藪の抑制をはかることが必要である。また、広いギャップも作らないことである。更新による単純な人工林の改良は緻密な配慮で、小林分の構成を考える必要があり、また、時間的な経過によって生じる変化を、林分構成として循環的に安定化して持続させる必要がある。(写真は構内演習林、数年前に小林分単位の間伐を実行した結果の現況であるが、低木層の繁茂が著しい。こうした間伐の効果による下層植生の繁茂は清水による研究がある。)
 これらの森林管理作業が森林施業と呼ばれるものであろうが、その施業体系は林業にとって古典的林学の課題であった。しかし、公園的利用に対応した森林管理技術としては全く未開発といえる。多くの手入れされた森林が藪が憎まれる状態で自然の変化に任せた森林形成の機会を失ってきたといえる。(写真は十数年前の間伐結果であり、清水の調査地である。低木層の繁茂は自然競争によって、亜高木層を形成しつつあり、更新樹としての生育が期待される。)