森林公園時代 森林レクリエーション

 森林レクリエーションとは、森林内での散歩、あるいは、ハイキング、観光などが頭に浮かぶが、森林という場所を除けば、戸外レクリエーションであり、その場所は山岳、海岸などの自然環境、農山漁村、都市環境でさえも含まれる。レクリエーションと戸外環境資源の接点に戸外レクリエーションを理解するとすれば、森林はその一部であるとともに、他の資源と並存して存在している。レクリエーション行動圏にこのような戸外環境資源となる森林がどのように存在しているかが問題であり、様々な理解が行われる。
 森林公園が各地に作られた時、その公園が利用されるかが問題であり、利用予測が行われるが、予測の的中は困難である。そこで、森林公園の利用がどのように行われるかは、結果の問題となるとすれば、成功する公園と失敗する公園に分かれてくる。失敗は多額の公共投資の無駄となる。人口稠密の都市住民のレクリエーション行動圏の範囲にあれば、利用の可能性は大きいが、行動形態の実態によっても変わってくる。都市住民のレクリエーション動向の調査が必要となるであろう。また、その動向は時代とともに変化するであろう。2003年の日本林学会誌の特集が「森林レクリエーション研究の展開」であり、そこで伊藤太一氏の総説で日米比較の検証が行われている。アメリカでは1962年にまとめられたORRRCの報告書が国民のレクリエーション動向を明らかにし、また、日本ではそのような調査が行われていないことを、指摘している。
 各所にできた森林公園の利用実績から、公園設定の成否を判断するとともに、成功した利用の多い公園における利用実態や成功の要因を分析し、それを通じて森林レクリエーションの実態を考察してみる必要がある。
 長野県内では、利用が少ないと思われる森林公園として、「美ヶ原県民の森」などが、比較的利用の多い公園として「大芝公園林」と「池山市民の森」「赤沢自然休養林」などが頭に浮かんでくる。
 「美ヶ原県民の森」は、ハイキング利用における美ヶ原への登山口であり、住民の自然休養地であった三城牧場の一角の山地に作られたものである。しかし、松本市街から隔たり、バスの便が少なく、自家用車の普及、牧場の衰退とともに、ハイキング利用、自然休養地としての利用も急速に、衰退し、一時は整備した公園施設も使われないまま、老朽化していた。近年は中高年の健康志向から、ハイキング利用が復活し、森林の生育とともに、森林公園の風致的魅力も生まれているように感じられた。
 「大芝公園林」は村有林である点から、長く住民との関わりの深い森林であった。数年前より生活環境保全林の整備が進められた結果、遊歩道などの施設整備と森林育成などによって、利用者が増大してきている。中高年などの健康志向による散歩などの利用を中心に、住民の日常的な散歩などの利用が密度高く、行われている。
 「池山市民の森」では駒ヶ根市有林を市民の休養利用の場として十年くらい前より整備したものである。空木岳と登山路であった点から、山小屋と遊歩道、山地に近接する駐車場の設置などから、登山者の利用が増大したことがうかがえる。また、池山までの遊歩道は、市民のハイキング利用を促進させることになったといえる。
 「赤沢自然休養林」は、木曾ヒノキの保全された森林であり、森林浴発祥の地として著名である。三百年に及ぶヒノキ林と源流域の渓谷の魅力によって、遠方からの休養客を集めている。
 以上の4つの森林公園を」通じて、利用の多い公園は、住民の利用する日常生活圏内にあることが要因である場合、森林、自然資源に魅力が高く、遠くの人までの利用が行われることが要因である場合がある。利用の少ない森林公園は、日常生活圏からは隔たり、資源的魅力が少ないことが要因であるが、ハイキング、登山などの特定の利用グループが利用を持続させる要因である。しかし、居住人口に対する森林公園の利用の割合、利用の頻度は、極度に少ない状態である。都市公園は住区基幹施設として整備が進められてきたのに対して、森林公園の整備をどのように進めるたらよいのであろうか?利用の実態はどのような示唆を与えるのであろうか?