場所と場面の構造 道の空間

 道は人々の移動のために作られた通路である。定住し、居住の場から目的もって出発し、出かける場合、目的地に向かう移動が必要となり、道を通路として利用する。そして、目的の行動を終えて、帰路につき、居住の場に回帰してくる。散歩は目的地のなく、回帰する移動自体が目的であるといえる。移動の行動にとって、道が選択されるが、目的地を持つ移動は、機能的に安全で短距離に到達できることが条件である。目的地までの通路が不明である場合には、迷うことになる。目的地が明示されるようなシンボルである場合には、そのシンボルに対する見通しがあれば、迷わなくてすむ。リンチの言う都市のイメージの明快な形成にとって、シンボルとパスの要素が重視されているのは、迷うことの混乱が避けられるということであろうか?都市周辺の居住地と中心市街との関係に適用されるかもしれない。迷い、探索して最適な通路を発見すれば、目的にかなった通路として恒常的に利用されることになるので、都市に居住する人々には、明快さは不可欠なものとはいえないが、様々な目的に対応した通路として街路網の明快なイメージが必要となるだろう。一方、散歩は回帰するにしても、歩くこと自体が目的であり、迷うことも目的の中に含まれる。それに加えて重要なことは、快適で楽しめる環境であるかどうかである。迷う条件は見通しが少ないことであり、快適な条件は騒音、空気の悪さ、日陰のなさなどの悪条件がないことであり、楽しめる条件は目新しさ、様々な要素によって複雑さ、などであろう。