風致と風景 雪景色

 降りしきる雪、降り積もる雪、積もった雪は道行く人を遮ぎっている。雪のあまりない地域に生まれて、雪は美しく、また、食べておいしいものであった。しかし、みぞれの雪は冷たく、濡れた靴に足が凍りついた。雪国に暮らして、1年の半分は雪に閉ざされた。凍てついた空気に雪の世界は、人間を我が物顔に支配する。暖かな家は人間の砦、僅かな火の温もりに、安らぎを覚える。しかし、吹雪の中ではその安らぎさえも氷つかせる。どんよりした雲と降りしきる雪が一つとなって人を不安の中に閉じ込める。
 雪は空から空間を満たして果てしなく舞い降り、風の動きを舞い上がり、表現する。雪の大小、軽重によって落下速度が異なり、遠近の重なりは空間の奥行きを生み出す。降り積もった雪は、地表を一面の白に変え、地表の凹凸に軟らかな陰影を与える。しかし、垂直な壁、木の幹はそのままの地色で、水平面の白の表面に対比して、その形態を浮き出させる。