場所と場面の構造 混住地域

 都市の郊外は、都市拡大の先端となるが、道路整備による線の拡大がやがて、幹線から支線が伸ばされ、住宅地として面が満たされると、さらに郊外が拡大していく。すき間を残して都市が拡散していく様は蚕食(スプロール)と表現される。蚕食される面の広がりは農村地域であり、農村居住において農家と新規住民との混在化が生じる。都市の拡散は中心市街の空洞化の要因となる。農村の衰退、農地の遊休地化が都市拡散を促進させる。都市拡散の防止の政策として市街化調整区域、用途地域を設定して、市街化区域内、用途区域内に都市整備を集中させようとするが、逆に市街化区域内の地価を高騰させ、都市整備を困難にさせる要因となりえたといえる。
 人口減少へと転換し、都市拡大は望めなくなり、農村地域の衰退がさらに予想されてくると、中心市街はますます空洞化するとともに、農村地域も農業と農地の持続が困難となり、遊休地拡大などの環境変化が生まれてくるであろう。同時に都市拡大も停滞し、郊外の拡散は、整備が充足されないままに、停滞することが考えられる。
 郊外の居住が農村との共住という面から、住生活に役立つ面があり、停滞した郊外居住者が、居住環境において農村環境を評価する場合も生じている。(伊那市西箕輪地区)しかし、農村地域の衰退が、蚕食を継続させ、農業の持続の困難が農村環境を悪化させていけば、郊外居住者の望む環境の良さが減退していく。停滞した郊外における混住から共住への転換の可能性はどこにあるのだろうかは、今後の課題である。
 郊外住宅地開発の状況は、都市によって異なるようである。土地所有者(農家)が、農地遊休化、収入の必要に応じて土地を徐々に切り売りして、宅地開発が進行する場合には、宅地は散在し、あるいは宅地間に農地が残存する。こうした郊外は拡散して展開する。農地の区画単位に数戸分の宅地が可能であるから、数戸づつの住宅地が分散、集合の度合いを変えて都市郊外が形成されると考える。公共的な宅地開発は、住宅不足が深刻な時期の問題であったが、大面積の土地取得と大量な宅地提供で、低廉な宅地供給として行われたものであろう。こうした大規模な住宅地は団地として市街の郊外移転のような様相で周辺農村環境との結合は希薄といえる。また、団地内で居住時期が一定であることによって居住者の年齢がそろい、地区全体の高齢化が進行する事態を生み出した。これらの現状から農住共存を考えていく必要がある。
 都市と農村の結合した居住は、ハワードの田園都市の理想として考えられた。田園都市の実験は、現実に即応して田園郊外、新都市、民間住宅地開発に変質していった。ハワードの目指した都市の利便性と農村の環境の良さ、居住者の近隣コミュニティ形成を可能とする居住環境は、計画的に実現しえたのであろうか?日本においてはハワードの理想が受入れられたわけではない。戦前、中間層向けの郊外住宅地開発に一部が模倣され、戦後、住宅公団による住宅団地計画に先進的な居住地形成として一部が受入れらたといえる。一方、現実に進行する都市開発の進展は、無計画で、無秩序な需要と供給の経済の中で、理想とされる居住環境は、省みられなかったのではなかろうか?