風景の主体 民主主義の発展

 ゴミ中間処理施設用地選定委員会で候補地の住民の理解度を評価するために、住民の意向調査が必要との意見がだされた。そこで市の事務局では、市報に挟んで全市民に配布し、意見を求める案を作成し、この案を検討した。
 広域連合としてゴミ中間処理施設の更新が必要とされ、その施設用地を連合で過半数の人口を有し、圏域の中央に位置する伊那市が引き受けることになった。この決定には連合長である伊那市長の判断であった。用地選定委員会が設定され、伊那市内で用地として可能性のあるものとしてピックアップされた16箇所を検討して、不適な場所を除く、13箇所を候補地とした。用地選定委員会は、評価項目を検討し、生活環境などへの影響の少なさ、用地としての適合性を評価することにしている。用地委員会の委員には、各派の市会議員と諸団体、公募の委員によって構成され、ゴミ中間処理施設の説明を聞いてその必要性と内容を理解するとともに、市民を代理する意識で意見が述べられている。この委員会の検討は、市報とホームページで公表され、それに対するパブリック・コメントを募集している。パブリック・コメントを委員会で検討すると共に、回答を公表している。また、候補地の決定後、地区代表者への説明会をはかり、周知をはかるとともに、要求の合った地区には地区住民への説明会を開催している。そこで出された意見も委員会で検討し、回答を公表している。
 このような委員会の公開とパブリック・コメントなどによる市民の意見の反映は、伊那市でははじめての試みであり、施設の用地選定に、地元住民の用地受け入れの合意を不可欠としているからである。委員会公開の方法には、反対の意見がなく、新聞記者などにも好評のようである。しかし、候補地住民の関心は、評価の内容ではなく、評価の結果を待っており、憶測が飛び交うと共に、委員に対する働きかけがあるとのことである。このように委員会の論議の水面下で、住民の意向の表明が混乱して集約されない形で出されてきているようである。正確な情報に基づく判断ではなく、根拠のあいまいな意見に、不安感を拡大し、施設用地受け入れに反対する立場をとるようなことにならないことを期待するのみである。今回、こうした水面下の意見を、水面下から引き出して、公的な立場からの意見に転換させる上で、市民全般に意見提出を求めていくことは、委員会に収斂した結論を決定する上で、重要な過程となるものと考える。住民の理解度は、評価されるものではなく、理解を深めて、理解度を上げる必要がある。
 市民全体の問題として、ゴミ処理施設の必要性、施設の影響による住民の負担の程度を合理的に判断し、用地受け入れ地区への負担軽減や補完を市民全体が受入れ地区への感謝とともに配慮することが必要である。市長はこうした市民の支持のもとに用地受け入れ地区との折衝に当たって、合意を得ることが必要となる。地元住民の賛否はこうした誠実な交渉の結果として示されることになるだろう。こうした最終過程に至る間に、委員会は市民と市長との理解と意思疎通の媒介となる役割を果たすものということになる。市民の責任による民主主義の正常な発展を様々な機会を通じて、期待するものである。