場所と場面の構造 快適な居住環境2

 ゴミ処理施設は集中的なゴミ処理の施設として大規模となっているが、それとともに用地が設定された地域では各所で住民の反対が起きている。処理場建設による影響を危惧し、居住環境を守ることは住民の当然の反応であるが、秋月氏が講演で述べたように、処理場の影響についての理解とともに、用地受入れ地区の負担に対して、広域住民の感謝の気持ちが対応として現われなくては合意が成立しないだろう。受け入れ地区の負担に対する補償もそうした合意によって生じるものであろう。負担の大きさに応分する補償の前に、影響をできるだけ少ない地区の選定、あるいは、影響を少なくする努力が必要である。そのために、どのような影響が考えられるかが、問題である。居住環境への影響を検討することを通じて、居住環境を守る上で必要な条件は何かが浮き彫りとなってくる。そこで出てきた条件とは、衛生(健康)、安全、利便、快適の4項目であり、従来から取り上げられた居住条件であった。
 衛生(健康)に関しては、大気汚染、有害物質の排出が影響するものとして考えられたが、現段階の施設では、基準値よりもはるかに低レベルに排出が抑えられているということである。微量でも蓄積すれば問題となることも考えられるが、高いエントツが大気中に拡散させており、排出口の基準からさらに低下する。それでもの心配には、設置期間を限定し、その間、汚染状態の監視を行うことで対処できるだろう。また、衛生と関係する臭気の発生の心配があり、微量な臭気の可能性はある。しかし、臭気の影響圏は広い範囲ではない。居住環境として最適な衛生条件は、新鮮な大気の維持であろう。しかし、流動する大気に境界はないので、現況の大気レベルの範囲で満足する必要がある。上下水道の整備も必要である。
 安全の確保に関しては、ゴミ搬入車による交通量増大への負荷によるものが、考えられている。爆発などの事故の心配は、必要がないとされている。交通量の増大は、交通事故の危険性増大に関係すると考えられている。広域から集合する搬入車は1日120台が想定され、現況の道路の交通量に負荷されることになる。危険を少なくする上で、生活道路や通学、通園路などの使用を避けるとともに、時間を限定する、歩道設置、拡幅などの道路整備を行うことも考える必要がある。それを判断する上で、現況の道路状況と交通量での、交通事故の実態を把握することも必要である。居住環境における安全性は、災害や事故、犯罪などの危険に合わないことであり、安心できる環境だということであろう。
 利便性に関しては、生活機能が損なわれないことである。生活道路の通行条件、教育、医療、福祉施設などへの影響が少ないことである。利便性の向上は、公的施設への接近のし易さとともに、日常的に買い物のし易さ、商店などへの接近のし易さなどが含まれる。そこには交通手段の利用も含まれ、施設の内容が関係する。各家庭へのエネルギー供給、通信施設の整備なども生活基盤として必要である。
 快適性に関しては、自然、歴史・文化、景観などの資源に依拠する点で、施設建設によるその資源の損傷が問題となる。しかし、快適性は、生活のゆとりの部分であり、それがないと生きて行けないものではないと考えられている。自然とのふれあいの場、公園などの存在、埋蔵文化財や史跡など特定の場所、あるいは保護活動の対象となるものの存在が資源として見出される。しかし、それを大切なものとして評価するかは、個々の住人の意識であり、活動の実態で示される。景観は景観住民協定の締結が、住民の集団的意志の顕在化したものと見られる。
 4つの居住環境の条件は、ゴミ処理施設などの影響を問題として、影響の軽減あるいは排除によって、持続させる価値が認められた。居住環境の基盤の改良は、公共事業や住民活動としても展開している。影響の少ない場所、建設条件として最適な場所をゴミ処理施設の用地として、最適と選定することになるだろう。環境基本計画では各地区の環境評価の向上を目指す方策が考えられ、都市計画では必要な基盤整備が提示され、緑の基本計画では自然環境の保全と公園整備の方向が示されている。また、住生活基本計画では居住環境改善の方向を提示している。これらの計画によって各地区の居住環境の向上の方向は、見えてきたのであろうか?それぞれの計画には、関連性が乏しく。5年、10年の計画目標の達成年次に実現可能性の根拠は乏しいのではないだろうか。それぞれの基本計画を吟味するとともに、相互の関連性を検討する必要があると思われる。