森林風致 林内の視覚変化

 林内の環境を構成する要素は多様であるが、晴れた日に林外から林内へと移動したとき、明るい場所から暗い場所への移動で目が順応しないだけ、鮮明に林内の構成要素を判別できない。やがて目が慣れても何に注目するかに戸惑いがある。その間に全体的な林内の様子が知覚されている。すなわち、明暗、温度、湿度、風、音、匂いなどの林外との環境の相違、また、全体的な空間の構成である。
 林内を移動するに連れて、視野の中で空間構成が変化する。前方のものが接近し、トンネルを通過するような変化である。やがて、空間構成要素の中から注意を惹く事物が現われて、視線をその事物に向けると視野を構成する要素が変化する。注意した事物を中心に空間構成要素はその背景となる。
 林内を構成する要素と事物が動きを伴う場合、その動きの変化に注意が集中する。風による葉の翻り、枝の揺れ、幹のしなりなど、風の強さによって動きの大きさが異なる。また、林冠が風に揺れると木洩れ日を変化させる。野鳥や動物の姿を見かけることは、少なく、また、一瞬である。チョウなどは長くその動きに目を留めることができるだろう。一方、ゆっくりした変化や動きを知覚することはできない。一定の間隔で知覚した眺めの差異として感じられるだけである。