森林風致 ヒバ林

 青森県大畑と増川に国有林が設定したヒバ天然林の施業実験林がある。昭和43年10月に岡崎先生のお供で見学をさせていただいたことがある。置戸と同じ「風致施業に関する研究」試験研究の一環の見学であった。やはり、何故、この施業試験林が見学地として取り上げられたかは理解していなかったが、松川氏による林冠群、林床群による林分タイプの区分とそれが更新過程に位置づけられることの知見を得た場所と後で知った。こうした天然林の構造から自然を生かした施業法が開発されてきており、風致施業における自然を生かす施業法として活かされうるものであることを、後で知った。岡崎先生はこれを予見して見学地、調査地として上げておいたのであろう。
 増川では、森林構造の調査を行なったが、ブナ林、ヒバ林、その混生林などの樹群があり、変化に富んでいるといえた。しかし、尾根と谷という風に地形的にそれぞれの樹群のタイプによる立地が一定であり、谷部などはヒバの純林状態となっていたことを記憶している。ヒバの純林は、ヒバの葉や幹の印象から、爬虫類を思わせ、あまり好印象は持ち得なかった。ヒバ林内は暗く、林床も植生は少なく、腐食で覆われ、無機的な状態で、更新の困難さを感じた。
 木曾赤沢のヒノキ林が下層がヒバ林となって、さらに林床が裸地化していくことが問題となったが、増川のヒバ林の印象と重なり合った。ヒバ林として施業の価値がないわけではないし、その耐陰性の特徴を生かすこともできるであろうが、赤沢ではヒノキ林の更新に邪魔な樹種として扱われることになった。ヒノキ林の更新に只木氏の提案で漸伐作業が導入されることになった。また、ヒノキ林の間伐と同時に、積極的に下層のヒバの除去が行われることになった。