森林風致 海岸林

 砂浜の海岸、海岸からの夕日や朝日は水平線と空に広がる陽光の華々しさを水面の輝きに映し出す。波打ち際に寄せ来る波が砂浜に一瞬の輝きをもたらし、時間を忘れさせる。人々は夕日に向かって波打ち際に足跡をつけ、波がまたその足跡を消してゆく。陸と海の境をつなぎ、地球と太陽の結合が実現する中に人の歩みがある。しかし、激しい風に波が荒れ狂い、砂浜を飲み込んで、岸壁まで打ち寄せる嵐もある。
 この砂の動きを抑え、波を防ぐために、海岸林が作られ、陸地が守られている。山地にはアカマツ林が見慣れているので、海岸のクロマツ林は目新しい。アカマツは雌マツ、クロマツが雄マツと呼ばれるるように、アカマツの優雅さに対して、クロマツの雄雄しさがある。海岸林が海の風雨に抗するに相応しい姿である。それは、葉の色、太さにもよるが、風に抗してできる不揃いな樹形にも由来している。
 瀬戸内海の沿岸の都市で生まれた自分は、海岸林に接することはなかった。大阪湾岸で須磨などの著名な名所も言ったことはあるが、さしたる印象はない。浜寺も著名な海岸であったが、埋立が進み、海水浴場はプールに変わってしまった。砂浜も海岸林も失われた。今は内陸部に住んでいて海岸に出ることはまれである。