風致と風景 行動空間の知覚

 戸内空間は生活行動に即応して人間尺度であるとともに機能的に計画されている。また、戸外の環境を調節するシェルターとしても機能している。個人の住居である場合には、個々の生活形態に応じて、家具の配置、室内装飾などで修正して、生活行動に適した空間を作り出す。こうした建築内部の行動は計画的に生み出された人工環境であるので、知覚に注意を必要とすることは少なくなっている。建築空間は床、壁、天井でできており、空間を構成する材料は選定されたものである。一度、その知識が得られれば、環境の知覚は意識する必要が無くなる。人が常に環境への注意を払って行動しているとすれば、注意は無目的なものとなり、例えば、壁面の染みなど、環境の状態から離れて連想や空想の世界へ意識が移行することが考えられる。建築は室内、廊下、階段、入口など行動に即応した機能空間で構成されており、同様の限定された知覚空間である。建築の多様な機能の構成も明瞭な場合と不明瞭か混乱している場合がある。これらも計画の問題である。
 戸外空間が行動に即応して人工化された機能空間として計画されているとしても、それは自然環境の一部を人工要素に置き換えているにすぎない。しかし、人々の集中と分散の度合や計画の相違によって、人工的改変の度合が環境によって異なる。改変のほとんどない自然環境から、改変の大きな都市環境、その中間の農村環境を区別することができる。