場所と場面の構造 視覚

 風景は視覚を中心に知覚される点で、心理学が最も大きく関与している。現在、心理学は脳科学と結びついて、かってなかった知見を生み出し、知覚の体系的認識に到達しているといえる。感覚から認知、行動の連関した認識は、風景の知覚構造を以前の認識から転換させる根拠となるであろう。
 以前の認識では、視野の範囲、遠近の視角変化、事物の形態や色彩などを問題として取り上げ、構図としての断片的で、静的な風景が問題とされた。しかし、現在の心理学と脳科学の認識は、行動に伴う環境認知としての日常的な風景に焦点をあてることを可能にしている。風景知覚の重要性は、環境の総合的な認知であることを以前に指摘したが、同時に、時代の変化は、対象としての外界から、主体の側に重点を移していったと考え、風景に対処する「場面構造」が問題となることを指摘しておいた。
 行動における場所、その場所を場として見出される環境知覚を場面構造としてとらえ、風景として環境が知覚されうる場面構造を問題としたが、風景の知覚を離れて、環境知覚が行動に伴うものである上で、場面構造は普遍的で、日常的な問題である。その場面構造にとって知覚に関する知見は、必須の根拠となる。