環境保全と景観保全との調整

 「環境」は多義にわたる社会問題となっているが、その解決には市民や住民の責任を課題とする。しかし、市民、住民生活の環境問題として意識され、問題解決に取り組まれるとはいえない。それは、「環境」問題の発生の原因が、市民、住民生活そのものにあることを意識されず、市民、住民の生活環境の中で環境問題の位置づけは不明確であるといえる。
 「風景」は「環境」の環境要素を総合化した眺めであるが、環境の表層であり、環境の全体となる深層は知覚されていない。風景の対象となる「景観」が社会的問題となるとともに、「景観」の持続が、住民の風景意識の高まりによる合意によって、支持されることも見られるようになった。住民にとって風景は、日常生活の中で意識される点で、その対象となる景観の持続に対する合意が生まれるのであろう。しかし、表層的な景観の持続は、深層的な環境変化によって困難になることが多い。「景観」と「環境」は、表層と深層で乖離しているといえる。
 住民の風景の意識と生活環境の関係を軸に、「景観」と「環境」の、表層と深層の乖離を解決することが課題であると考える。