森林景観

はじめに
 景観を、地理学で定義されたとおりに、森林景観を理解している。ここでは、その森林景観が、風景として知覚されることとの関係性を考える前提で、誰もが考えていることを記述しておこうと考えた。


森林環境
 国土の3分の2が森林で覆われていることはよく取り上げられることである。地表に植物が生育し、多様な植物が森林を形成し、そこに生活する動物相とともに、生態系を形成する森林環境が広く分布し、恵まれた気候と土壌の条件によって多様な森林環境が成立することも、多くの人が理解するところであろう。こうした森林環境が、自然環境で優位に成立することが、国土の森林割合から明らかである。
 人間の土地利用は、自然環境を破壊して展開し、人工環境を出現させ、その極致が都市環境といえるのであろうが、必要な自然環境を残し、再生させる必要が生じてくると全くの人工環境とはいえないだろう。都市環境と自然環境は対比的な存在であろうが、農業による土地利用によって成立した農村環境が広く存在している。農村環境は、森林環境を開墾して、地表の土壌を利用する点で、自然と人工の中間的な自然環境を出現させている。農村環境の持続のために、森林環境を保持し、利用する必要から、森林環境の保全や改変がなされた。森林環境は、人工環境と拮抗して存在するとともに、人為的影響によって、中間的な自然環境を含んでいる。

森林景観
 森林環境が地表を覆っている範囲を森林景観といえるが、人工環境と拮抗して存在していることから、多様な変化を見せ、人工環境と関係する森林景観としてとらえられるだろう。また、森林景観は自然景観であるとともに、人為的影響によって多様化あるいは単調化された半人工景観の多様な状態で見出される。
 多様な森林景観を理解する視点は、自然への影響の視点と、人間の利用の視点で相違してくると考えられる。森林を自然景観の視点から人為的影響を自然のかく乱としてみいだすか、利用の視点から森林資源としてとらえるかの相違が生じる。