緑化事業

はじめに
 緑化から思い浮かぶことは、国土緑化や道路法面の緑化まで思い浮かぶ。都市環境に樹木を残し、街路樹や生垣、公園や緑地の建設、推進も緑化と言われる。「みどり」の色彩は。植物の緑と結びついていることは確かであろう。失われた緑を回復させる事業を総称して緑化といってよいのであろうか。

量的問題
 緑を失うことがまず、問題とされるのであれば、最初に緑を失わないことを行う必要があり、そのためには現存する緑が何かを明らかにしておく必要がある。都市の航空写真から、緑の残る割合として緑被率が算出されるが、それは緑の減少を見出すだけに終わっている。また、場所毎の緑の残り方を視覚ではかる方法として緑視率の方法もある。緑化は緑の量的減少を補う事業だと考えれば、緑の減少の原因を克服するものではなく、減少に対する対症療法であるのだろうか。
 緑化が広く、様々な場所で使われているのは、植物の被覆のみどりとして量的扱うのに好都合な言葉であったのであろう。しかし、緑の減少を補う緊急事態を脱した段階では、緑化ということの適用範囲は狭められる。国土緑化は戦後の山地荒廃に対処した植林事業を国民に訴えて推進されてきたが、すでにその役割は終わり、現在は成立した森林の育林が問題となっている。

質的問題
 みどりの質を問題するなら、植物の被覆で量的にも、質的にも圧倒的な比重を占める森林に焦点をあてるべきだろう。国土緑化はその森林の戦後の欠除を補うものであったといえる。森林の欠除による環境悪化は充足された結果、補われたとすると、森林の存在がもたらす環境効果が不可欠なものであったので、緑化を進めたといえるだろう。緑化の意義は、森林環境の充足を求めるものであるとは、まだ、断言できないが、考えてみる必要があるのではないだろうか。