下西条緑の会

はじめに
 塩尻市下西条の緑の会の年末の作業に朝、駆けつけた。しかし、あいにくの雪で、作業は中止して、見回りと製作中の塩尻市内地形模型を見学することになった。緑の会は、下西条の裏山となる流域の山地の森林を育成して10年を越えて活動している。下西条区の地域住民が、森林育成の作業日が決まると、自由に集まってきて作業していくが、作業後は集まって懇親会となって楽しんでいる。今回は20人を超える人々が集まった。
 私も学生とともに地域活動に参加して、多くのことを学ばせていただいたが、緑の会に集まる住民の地域への愛着と森を育てる意欲に感心するばかりである。長年の森林の成果が表れ、森林環境は見違えるように良くなり、参加する人の満足とその環境を利用する人々も増大している。地区の居住環境の向上に大きく役立っているといえる。地域外からもその実績が評価され、環境改善のための植栽とその管理などの仕事が任せられている。私も今は個人で参加しているが、成果となった森や活動の様子を聞くのが楽しみである。
山ノ神
 緑の会の活動は、山ノ神自然園から始まった。川沿いが湿原となり、カラマツ、広葉樹の高木の下の林床には植栽されたミズバショウが生育し、様々な野草が楽しめる場所となった。春に花咲く野草のために、枯れ葉を除いたりする作業が行われている。橋、歩道、水のみ場も、すべて作業に集まった住民が作ったものである。
 流域を形成する渓流で、流域の奥には百名山ともなっている霧訪山があり、山ノ神自然園はその登山の通路となっている。登山者に杖を提供する心遣いもしている。当日は雪の中を見回り、口々に雪景色もまたいいねなど楽しみながらの散策である。
 緑の会の人々は、付近の山をくまなく踏査して、珍しい野草の生息地や巨大なモミの木などを発見し、互いに情報を交換して、流域の山を知り尽くしている。今回は、山ノ神の祠は岩石の露出したところにあり、荘厳な雰囲気をかもしているが、そのさらに上部の岩の模様が見事だということで、見に行った。 

森林風致
 山ノ神自然園から、山ノ神の祠は林道を挟んだ山腹の斜面にある。山ノ神自然園の育成から、次に緑の会が取り組んだのが、この山腹の森林の林床の手入れであった。森林は過密で下層は藪となっていた。最初、藪に生育する、ツクバネなどを楽しんでいたが、歩道をめぐらし、林床にササユリを育てることになり、種を播種したりして、育成をはかった。間伐を行い、林内を明るくして、カタクリの生育も図られた。皆、口々の提案から、協力が生まれて、自然発生的に作業が進展する、不思議な方法である。木こり、大工、植物栽培家、絵描きに写真家、それぞれの特技や専門が生かされ、作業にハーモニーを感じる。その結果、生まれた森林の状態に森林風致を感じるが、いかがだろうか。雪のせいなのであろうか。

地形模型
 木曽の奈良井まで広域合併によって塩尻市が拡大した。緑の会の人々は、森の手入れとともに、冬の作業として地区の地形模型の作業に取り組んだ。模型は様々に活用され、地区を知る上で役立ち、楽しみとなっている。冬が過ぎて野外作業の予定を立てるのも役立てられた。今度は、拡大した塩尻市の模型を作ろうと、5年前から取り組んでいる。作業のための小屋を提供する人があって、そこに毎週集まって、2時間ぐらいの作業を行ってきた。一日、積み上げられる、等高線の切り抜きは1枚だけ、積み上げられた枚数は作業の日数を示している。はるかな山頂への登山道づくりを計画し、やっと完成したということだが、こうした作業の場所を展望できる楽しみがあるのだろう。