日本の里百選 松之山松代 1

はじめに
 松之山松代(まつだい)が日本の里百選に選定されたことを、キョロロの研究員の澤畠さんから連絡していただいた。松之山には松がないのに、何故、松のついた地名となったのか、廃校の前の宿舎に泊めてもらって、澤畠さんから差し入れのどぶろくを飲んでいた頃、聞いたようなような気がしたが、忘れている。
 百選は景観、生物多様性、人の営みを基準として、山田洋次委員長の選定委員会が4474の応募の中から選んだということである。日本中からの応募であったろうから、様々な場所の応募があったのであろう。選考委員会は日本の里のそれぞれの特徴を代表するような地域を網羅しているのだろう。こうして選ばれた里の中で、松之山松代がどんな里の特徴があるのか、考えた。ここから、他の里はどんな特徴があって、日本の里はどんな現状にあるのかにも、視野が広げられるのではないだろうか。

里とは
 里は農村、漁村などの村が浮かび、村の中の居住の場所、集落を指すのであろうか。山中を行く旅人が、やっと人里を見て一夜の宿が求められるとほっとする、昔話が思い浮かぶようだ。松之山も山を越え、谷をさかのぼった奥地の山村である点で、こんな山里のイメージが重なりあってくる。山の自然の中で、人の営みが行われている場所を、山里と言ってもよいのだろう。平野の村や、漁村では、山のような自然を冠することもなく、ただ、人の営みの場所で里とだけ呼ぶのであろうか。
 里の多くが、長い歴史を持っている点で、古里である。新しい里は、単なる里なのであろう。しかし、新しい里も郷里を離れた人には故郷となる。離れた里は、郷里であるとともに、故郷であるのだろう。多くの都市住民も近代化の中で、田舎から都市へと移住してきた人が多く、そうした人には故郷を通じて里の姿が思い浮かぶ。そして、故郷にいつか帰りたい。また、帰った時には変わらぬ故郷が待っていると信じているのではないだろうか。
 現在の里の住民からすれば、親を残して旅立った子供であり、離村した隣の一家であるのだろう。松之山からも多くの離村があった。残された農地は放置されて荒地となり、自然環境へと回帰し、次第に、人里は縮小し、その痕跡が散在している状態へと移っていくのではないかと危機感が生じる。特に豪雪地帯の松之山では、冬の雪に埋もれた人家の風景と重なって危機感が増幅する。