自然保護と林業

はじめに
 自然保護と林業開発の対立は、戦後直後から生じてきた。林業が対応する木材資源が枯渇し、残された資源を奥地の自然環境に求めようとしたために生じたことである。しかし、それは林業に限らず、電源資源、鉱物資源などでも自然保護に対立した問題であった。これらの資源開発に反対する自然保護の理由は、貴重な景観資源であることであったが、景観資源は観光的な利用にとって有用であると考えられたからであろう。
 しかし、高度経済成長後の生活水準の向上の中では、観光開発が自然保護と対立することになった。観光開発のための道路建設が、問題となったが、その道路は林業開発と併用され、それによって景観資源を失う可能性があった。観光開発が地域振興として地域住民から期待されてはいたが、観光開発のための景観資源破壊には、注目されなかった。景観資源の破壊は、貴重な自然のためだけでなく、地域住民の生活環境にも影響を及ぼす点に、気づいた住民による自然保護運動が生じ、住民間での保護と開発との対立も生じた。林業が景観破壊ではなく、森林資源を育成し、地域住民に貢献するものであったならば、このような対立は生じなかったであろう。現在は森林資源の育成がなされながら、林業が成立せずに、森林が放置され、地域住民の利用への貢献も滞るという状況に低迷している。
 森林資源を巡る様々な立場を対立から協調へと転換することが必要であろう。現在はその可能性が大となっている。

自然公園と国有林
森林公園の風致施業
観光・自然休養における資源育成
地域生活環境と森林との両立