森林構造と風致施業

はじめに
 森林を空間構造としてとらえると、天空を林冠が壁となる側方を林木の林立及び下層の林木が、地表は林床となり、暗い林内空間を形成する。林外に対しては、枝、下層植生の繁茂をもって林縁を構成する。しかし、この森林構造は林冠を林立を構成している高木類の成長の結果である。林業はこの高木類の幹を収穫して、木材として利用するために、森林を育成している。皆伐による収穫は、植林によって森林形成を開始させる必要がある。択伐の場合は、更新樹に期待しなければならない。こうした高木の収穫作業によって森林を持続させるためのいくつかの作業種が生まれ、森林構造は各作業種によって相違し、また、各作業種における森林成長、更新の過程によって、すなわち、林齢段階によって変化する。すなわち、森林施業とその施業段階、林齢段階から多様な森林構造が出現し、空間構造が相違する。
 その空間構造に人が森林環境を楽しむために入ることによって、森林風致が意識される。空間構造の違いによって異なる森林風致が意識されるが、意識する人間によっても相違するので、森林風致は空間構造以上に多様となる。しかし、一人の人間にとっては、個性的に意識するから、空間構造の相違だけに森林風致を意識するのであろう。森林による風致の相違を森林の個性とするなら、その森林の個性は、個性的な個人の意識によって見出されるものだろう。
森林構造と保育作業
 保育作業の多くは、皆伐作業における植林木の育成が主であるといえる。下刈り、ツルきり、除伐は、成林するまでの作業である。成林後、枝打ち、間伐などが行われ、林内では、下刈り、ツルきりの必要は無くなる。しかし、間伐などの作業のために下刈りを行うことはある。成林後の下刈りは林床の植生の除去となる。また、林道沿いや林外に面した林縁部では下層植生、つる植物が繁茂し、枝が伸長してくる。道の通行、境界のはみ出しのため、下刈り、ツルきり、枝打ちが必要となる場合がある。道路では、両側の樹木が上空を閉鎖すれば、林縁が消失する。