居住環境と自然の関係

はじめに
 居住環境―住宅は人工的に作られたものである。しかし、土地、大気、陽光は、自然のままである。そして、この自然条件をも建物はシェルターとして遮断しようとする。遮断して生じた建築内部環境こそ、求めていた居住環境なのであろうか?建築外部においては、敷地の造成は地形、土壌の自然的条件を改変し、敷地の狭小さと周囲の建築による閉鎖は陽光を制限し、大気を停滞させる。室内と室外の関係、敷地の地形改変と面積などにおいて自然との関係の大小が変化する。外部環境の遮断には、建築材料が関係しているであろう。
 地形造成がされた住宅地は、厳しい地形程、宅地を得るために改変が大きく、山地の豊富な自然から遮断されている。自然の被覆、森林を失った山地は、崩壊と落下の危険や風当たり、日照までもが厳しくなる。急坂の道路、崖に区切られた区画は、一方では遥かな眺望が得られるが、近隣はコンクリートの高いよう壁に隔てられて、行き来ができず、敷地が見下ろされる。山中なのに、樹林は無く、美しい庭はあるが、周囲と隔絶している。住宅は平坦に広げられた敷地に平然と作られている。ここには大きな無理があるようである。それは、自然との対立あるいは混乱した関係があるようである。

自然に従属した居住環境
 海岸の急傾斜、山地の急傾斜に張り付くような集落を見かけることがある。高台は潮風を避け、津波や谷に起こる災害を避ける点で、選ばれた居住環境であったのであろう。そこでは、かえって地形を生かして、土地の改変を少なくし、風と崩壊を避けるために、石垣を築き、南向きの日当たりで過ごしやすく、農地の収穫が得られる。住みやすい環境となっている。その住みやすさは、集落や家屋の古さが、永続を示している。もしもこれまでに災害に会っていれば、もうそこには誰も住まなくなったであろう。自然は災害の脅威ではなく、恩恵をもたらしている。それが、可能なのは、自然の中に、安全な居住環境を見出して、自然を破壊しなかったからであろう。人間はその限界の力で、自然の力に従うことが、永続の調和をもたらすといえる。

人工に従属した居住環境
 都市は平野や盆地に展開していることが多い。都市拡大とともに、海岸の湿地や、川原の氾濫原を、堤防を作って、埋め立てることで広げられることも多かったとのだろう。それは、人工地盤といえる。川が作る土砂の堆積を人工の力で行い、波や川の流れによって持ち去られる土砂を堤防を作って防止するのである。一方、湿原には堀を作って、水位を下げて、排水して、乾燥した土地を生み出した。その新たな環境を居住地として、住宅を建設することができた。交通、水道、電気、生活に必要な条件はすべて人工的な施設によって供給されるのである。

結論
 簡単に抽象的な結論に持っていくと、自然的条件、人工的条件をどちらも、居住環境に大切な要因であるから、場所によって、両者の比重が相違するが、常に一定のの均衡をはかるべきである。しかし、この結論が問題なのではなく、既にある居住環境が、場所によって自然と人工の均衡をどのように成立させているか、観察する必要があるということなのである。そして、その居住環境がどのように永続性を持ちうるのかを考察するのである。今後の環境共生住宅を考えるために努力しよう。