日本の庭ことはじめ5 デザイン論の構築

はじめに
 庭のデザイン論に取り組むことになることは、全く、覚悟が足りなかったようである。他の人が取り組むことに期待していたのだが、期待通りにはいかないものである。なお、その上で、建築環境デザイン理論の先鋭的な研究者にデザイン理論構築の助力をお願いした手前とても引っ込みがつかなくなってしまった。岡田さんの著書の意義を明らかにするためのシンポジウムの目処も、庭園のデザイン理論のための布石と考えているのだが、岡田さんの著書の意図が庭園デザインの主観的観点からの評価であり、デザイン理論の構築ではないことは明らかである。しかし、その独自の評価に、現代造園に必要な要素がこめられていることが感じられた点が多くの読者を獲得した理由があると考えている。
 近年にも次々と日本庭園に関する本が出版されている。こうした本のそろぞれの主題の相違を対比して、岡田さんの著書の位置づけを行う必要がある。しかし、過去には名だたる著者による日本庭園の著書が山積していることを考えれば、これらを総括し、体系づけるようなデザイン理論の構築は、大きな研究分野であり、一人の微力でなしうるものではないことは明らかである。
 しかし、建築環境デザイン理論の先鋭的な研究者にデザイン理論構築の助力が得られることは、願っても得られない大きな好機である。これ以上の御迷惑をかけることはできないが、微力でもやれる限りはやってみよう。覚悟して理論構築を構成するための章の題目のいくつかを概観してみようと考える。

庭園デザインの構成要素
 庭園は個人の占有する敷地を居住空間とするための囲われた空間に作られる。敷地は住居と戸外の庭の居住空間で構成される。住居を前提に庭が存在し、戸外空間に対処して住居が作られる点で住居と庭は不可分である。しかし、住居が建築技術と建築内の生活機能に依拠し、庭が戸外空間の自然環境の回復と生活機能に依拠する点で、敷地と生活機能で結合しながら、対極的な人工と自然の環境となる。
 デザイン以前の計画の段階では、敷地計画として住宅と庭園は同時的に考えられる。この結果、敷地の囲障内に住宅の周囲の戸外空間が地割される。地割によって戸外空間は前庭、主庭、裏庭、通り庭、菜園、作業庭などの庭園空間が生じる。それぞれの地割部分の特性に応じて設計(デザイン)が行われる。
 規模の点で、敷地と建築との関係は様々であり、その関係によって庭園規模が決まってくる。そこには、居住者の経済的な条件と生活スタイルが作用している。最小な敷地に最小な住宅の下限に対して、最大の敷地に最大の住宅を上限として、経済的諸階層の住宅地の規模の相違が想定できる。住宅の最大規模には限界があるが、敷地規模には限界がない点で、上限の階層には広大な庭園が生じる。下限と上限の間に多くの中間的な階層の住宅地を見出す。敷地と建築の関係は中間層で多様であり、多様に変化する庭園を見出すことが出来る。
現代庭園への過程と目標
庭園デザインの都市環境への適用