森林美学の背景(3)森林美学に登場する人物

はじめに
 森林美学第二版にフォン.ザリッシュが引用、参考に上げた人物は多義にわたっている。フォン.ザリッシュの教養と森林美学著述への問題意識の上で、当時の時代(19世紀中葉から20世紀初頭)の中で、取り上げられなかった人物の名前も含めて検討する必要がある。 森林美学に取り上げられた人物に関して、今田敬一によって既に森林美学の構成と関連して分類されている。大きくは、美学的論拠における分類と森林の美的取扱いの論拠のために分類されているが、美学史(哲学・文学)、林学史、時代的背景の位置づけによって、再検討して考察を加えたい。 
森林美学に取り上げられた人物の分類
192の人名を検出したが、専門の分類ができているのは、現在とところ121人である。美学的根拠として、美学者、芸術家、古典の作家、に分類でき、樹木、森林に関しては、科学者、林学者、森林官、造園家、行政官に分類できる。
 美学者は15人、文学者などの芸術家11人、古典の作家は6人、森林官、林学者は56人、内、林学者は8人であり、樹木、森林、自然科学者は、14人、造園家、都市計画家は8人、政府要人、官僚、行政官が、19人である。
 美学的基礎に関して、古典を引用し、芸術家特に文学者の論述によって自然観察や森林の美的感性への根底に迫ると共に、ザリッシュ自らの森林美に関する洞察を一般化し、その論拠を美学に求めているが、哲学的な美学よりも科学的な心理学による美学を重視しているといえる。
 森林に関しては、多くの森林官の経験とザリッシュ自身の交流を林学者の理論的基礎とともに論拠としており、森林に関連する分野の科学者の論述に林学の範囲を越えた森林の広い理解の根拠を求めている。造園家は、森林の公園への転換を庭園技術を駆使して行う点で取り上げられる。森林は貴族の社交場の狩猟地として公園的に取り扱われ、美化が図られる場合があり、森林美化と対比して取り上げられている。皇帝、国王を含めた政府要人、行政官との関係や、また、談話や著述の引用は、森林の置かれている社会的評価を表すものであり、ザリッシュの社会的立場からの人間関係を示すものである。