風致林育成のための間伐方法の検討

はじめに
 間伐、択伐、画伐、保残木作業は、収穫と同時に森林育成をはかるものであるが、それぞれの作業の伐採効果はどのように相違するのであろうか。また、その作業は林木の密度調節として、密度をどのように変化させるのであろうか。また、この密度調節によって林相の転換はどのようにはかられるのであろうか。密度の緩和には、林木の成長を持続させることと、林内に光線の射入を大として下層植生、更新木の育成をはかるという二つの効果が相待っている。
 また、密度緩和の大小は、林冠閉鎖期間の長短に関連している。森林を持続、育成する面からは、残存木の選定が問題となり、木材収穫からは、伐採木の選定が問題である。どちらも、伐採によって林冠に穴が生じ、その穴に隣接する林木の樹冠が拡大し、成長に役立つ。林冠の穴は下層に光線を射入させる。林冠の閉鎖は樹冠の拡大を生じさせなくなり、上長成長は持続するが、肥大成長は停滞し、年輪が詰まってくる。
 森林の各密度調節方法の作業方法は、林相を変化させ、目標林型とともに森林の循環的な生産をはかる上で森林施業を成立させる要素である。間伐作業は皆伐林型に適合し、択伐作業は自然林型に適合し、画伐作業は多段林型に適合する。保残木作業は、皆伐から天然更新をはかる作業であろう。皆伐林型の一斉林に画伐作業を行うと、多段林型に転換することになり、さらに、択伐作業を加えると、自然林型へと転換させることができるはずである。
間伐について
 間伐は密度調節として皆伐林型の目標となる一斉林型を維持するための収穫作業であるが、均質な密度の植林の状態を維持して林木配置を密度を減じながら均質な密度を保ち、収穫する林木を均質なものとすることができる。残存木の選定作業も機械的に等間隔に残るようにすればよいといえる。集約的に均質な材を得るために北山林業などで採用されているのであろう。
 単に密度調節の効果だけであれば、間伐率の問題としてどのような方法でも良いということになる。密度理論によって量的間伐と総称されるが、それでも、均質な配置が目指すことが多く、省力化などの作業効率の点から列状間伐などの方法が採用されることにもなったのであろう。列状でなくても団地的な伐採区域の設定と考えれば、画伐作業に類似してくる。ただし、画伐作業は更新を主眼としているのであろうが。島崎先生は単木的に残したい木にマークし、マークされた木が生育するように伐採木を選定するか、マークした残す木以外は全く自由に伐採木を選定する簡便な方法を考案している。
 戦前からの寺崎式間伐は質的間伐と言われるが、林木を等級に分け、一級木を残し、その生育に役立つように競合する等級を伐採木とする点で、島崎先生の方法は、寺崎式間伐にも結合している。選木作業の簡便化をはかり、誰でもできるマーク法としたのであろう。しかし、専門家であれば、より、マークした木が生育するように伐採木を選ぶ点で質的間伐に近づくだろう。寺崎式間伐は択伐作業にも有効であるが、択伐作業は収穫できる伐採木を選定して、そこに生じる林冠の穴によって更新をはかろうとするものであるので、更新が眼目となるといえる。
 フォン・ザリッシュは人工林の美的な改良としてポステル式間伐方法を提唱している。寺崎式間伐と同様な等級区分を行い、一級木の生育に邪魔にならない下層を残すことによって、自然的要素を人工林に付加することが眼目とされてる。
作業型による林相変化の効果
 森林作業型によって示される林相の相違は、岡崎先生がクヌッフェルを引用して提示している。密度調節による伐採は直接森林構造を改変するとともに、林内環境を変化させ、その林内環境が新たな森林構造を形成させて、それとともにさらに林内環境に変化がもたらされる。また、その林内環境が人間に森林風致を知覚させる。この関係構造に関しては、清水の「ある日、ある時」のブログを参照すると明快である。こうした林内環境の変化が多様な森林風致へと反映する点で、森林成長に伴う人為作業が森林構造に変化を与えることが原因となり、森林風致の結果となっている。
保残木作業は皆伐地の天然更新のために母樹を残すものであるから、単木が点在する景観をもたらす。しかし、閉鎖した林冠の中にあった樹木は樹冠が小さく、枝下高が高、枝の密度も疎であり、孤立した単木とは言いがたいであろう。種子供給の可能性も危ぶまれるかもしれない。速水林業では植林木の保護に役立てるという話をお聞きした。広い皆伐地には群状で保残するとよいが、大面積皆伐自体避けられる必要があるだろう。一方、広い焼け跡地には、アカマツやシラカンバなど陽樹と言われた樹種の一斉林ができて、大面積皆伐と同様の一斉林が出現する。
 間伐は森林の閉鎖を緩和させる作業であり、残存木に林冠の空隙を広げて成長を促進させる。林木の密度の減少とともに林冠が疎になるが、樹冠の成長でしばらくすると林冠が閉鎖する。陽光を受光する上で林冠を平面的に考えて、平均的に成長をはかると林木間が等間隔に近づく、個々の樹冠は隣接木の樹冠と等距離となる。高さ、幹の太さも同等になってくる。疎とすると