林内空間の構成要素−仮説の森林構造(2)

はじめに
 清水ブログの森林風致の構造図から、林内環境と林外との関係が明らかにされている。林内環境を知覚することから、森林風致を判断する応答が成立してくるという構造図が成立している。森林風致の判断において林内の森林空間は、様々な側面から判断されていることが、明らかにされるであろうが、新島の森林美学でも、林内空間が林外からの陽光の射入の角度で論じられ、これを岡崎も風致における林内の条件を新島を引用して取り上げている。林内が林木によって平面的に周囲を閉鎖された囲繞空間であることを、塩田が外部を眺望空間として対比的に位置づけている。清水の構造図は森林の断面に重ねて構造的関係を示す点では、さらに、林冠による光線・大気の影響にまで、考慮した立体的空間を林内として示している。こうした、これまで論じられている林内空間の諸側面を総合化してとらえる空間論が考えられる。

林内環境の要因
 林内環境は森林構造と森林構造によって林外の環境要因に影響して生じた要素によって構成されていることが清水によって明らかにされた。林内空間はこの環境で行動する条件として知覚される。行動によって空間は主体側から特徴付けられ、その特徴が知覚空間を構成する。

林内空間の構成要素
 主体の行動目的として、隠れ場として囲繞空間があり、見渡すことによって眺望空間がある。また、行動の自由に対して開放空間が、不自由に対して閉鎖空間がある。閉鎖的な建築の場合を例にすれば、建築内部空間を構成する要素は壁面、床面、天井であるが、森林では側方の林間の見通し、林床、林冠である。外部からの光線の射入を考えれば、林縁、木漏れ日、緑陰となる。
 林内の範囲は、林外に対する境界であり、林縁を構成し、上空に対するシュルターは林冠を構成している。この空間を充たしているのが大気であるが、林外からの風が、林木の動揺で緩和される。この空間を構成する材料は、林木、植物、動物、土壌、大気、日照であり、距離による知覚の構成によって至近景から近景、中景、遠景によって、ミクロなスケールからマクロなスケールで知覚される。
 林内空間の範囲は平面的な森林の広がりに一致しているが、林外はその外側の広がりを指しているので、範囲は決められず、林外空間の範囲は限定できない。空間の広がりの中に、林内空間が存在しているだけである。森林が建築空間のような壁で構成されていない点で、林内環境は、外部環境から遮断された閉鎖空間ではなく、外部環境に常に左右されており、内部と外部との境界は、不明確であり、その知覚は外部環境と意識によって変化するといえる。
 境界の不明確さに関わらず、林内空間は、林外とは明暗によって明らかに相違しており、そうすると、林縁、林冠が林内と林外を異なる空間として分ける要素である。直射光、林冠の間接光の相違は、同時に気温や湿度の大気の相違に連動している。そして、空間を大気が充たすと同時に、林木の幹、枝、下層木、林床植生の生育が充たす空間であり、林内の明暗の強弱に連動している。林内空間はシェルターで囲まれた空間というよりは、外部と異なる大気に充たされている。空間として考えるよりも、大気、雰囲気の相違として、視覚的よりは、体感的な知覚によるものといえるのかもしれない。