命育む農業

はじめに
はるばる農園より
 生みたての卵は透き通っている。戦後、社宅住まいの庭では鶏を飼い、カボチャや野菜を育て、道が麦畑になっていた。行き始めた小学校では校庭にサツマイモの畑があった。毎朝、野草を刻み、貝殻を砕いて、鶏たちの餌を作るのが、子供の役割だったのに、産みたての卵は近所への進物となって目の前から消えていった。
 昨日の夜、立川さんが野菜などを届けてくれて、前回に子供さんのおみやげにパンを持たせた、お礼にと卵を4個も持ってきてくれた。家庭用に飼っている鶏の卵なのに、生まれた卵をみんなもらって、かえって子供さんに悪いことをしてしまった。卵は、手で包むと、温かみが伝わってくるやさしい肌触りだった。小さな雛の姿、親鶏となっていく姿が想像され、昔の思い出や立川さんの子供たちの姿が思い浮かんでくる。