風景の模型(11)イメージの分析

はじめに
 イメージは五感による体験の意識であるが、視覚が場面を一瞬のうち全体的に知覚する点で視覚的イメージが優先しているのではないだろうか。体験の記憶も視覚的イメージが象徴化しているように思われる。絵画は視覚的イメージに体験が純化されて示されている。しかし、その視覚的イメージから、大気の触覚、風、嗅覚の匂い、聴覚の音までが再現される。脳科学では各感覚を意識する脳の部位は異なり、その部位間の神経結合がイメージを構成することとされ、人間の脳では視覚野が最大に大きくなっている。外界の知覚の受容と判断に視覚が優先していることと関連していると言ってよいであろう。
 視覚によるイメージは、目の能力に依存し、限定されていることは当然である。体験を分析し、判断を行うことはイメージの分析をもとに行われるのであろうが、その分析にはイメージを構成する感覚能力も含まれている。そして、この能力の発達が、行動形態と結びついていることも指摘されている。発達した感覚能力によって行動が拡大し、その行動が感覚能力を発達させるという循環関係が外界への様々な適応を生じさせることは進化論そのものである。
 イメージが体験の記憶であるとすると、記憶にあるイメージは行動と行動のための感覚によって知覚された外界への判断が含まれている。トンボに記憶があり、外界のイメージをもっているとすると、トンボの目が複眼で前方から背後までの視野を有しており、小さな餌となる虫が飛んでくるのを知覚するのに適している。人間の目は前方に向かって視野があり、背後は知覚できない。前方を注意し、進行する行動に適している。トンボの視野は外界を広く受容するのに適し、人間は前方を受容すると同時に探索のために注意するのに適している。人間の背後への注意と知覚は聴覚によっていることは、耳の形からも推測されるだろう。

視野の分析
 注意対象と背景 対比による印象の強調 全体視と背景 行動空間の奥行き、遠近

知覚(五感)による経験(行動)の意識化
 印象によるイメージ(記憶)の喚起

言語信号(音)による経験の象徴化
 言語によるイメージの再現 伝達と交流
 
文字記号(視覚)による記憶の集積
 文章によるイメージの構築 論理的判断の発達

イメージ空間の再構築としての模型の意味