森林と流域

はじめに
 山地は尾根と水系によって流域が形成されている。尾根は分水界となり、水系は集水した流水線である。こうして見ると山地の広い面、山腹は雨水の受け皿である。その面が森林で覆われていることによって、森林は水を地面に染み込ませ、透過した水を安定的に河川にもたらす働きをしている。森林水文学の課題であるが、森林が地面を安定させる作用、安定した流水を供給する作用は、治山の分野である。また、雨水の供給による土壌水分によって森林生育が行われるのは、森林立地学と育林学の分野である。雨水と森林との関係には多面的な関係があり、さらに人間との関係のもとで、こうした基礎科学を利用した応用科学としての林学の諸分野が成立している。
 流域を全体的とらえるという視点が見直されてきている。地形、被覆としての植生、場所に応じた土地利用と環境的な影響であり、植生と土地利用を操作することによって流域管理という総合的な計画分野を確立しようとするものと理解している。確かに、水系管理は流域をコントロールして行っている現状がある。それは、ダムによる貯水機能を利用するもので、綿密な調節が可能となっているようである。これを植生、森林の面からできないかと考えることは長期的な環境保全にとって重要であり、森林の状況改善に示唆を与えることであろう。
小流域の端末に砂防ダム
中流域の土地利用
 しかし、流域管理計画を目指すとして、ドイツにおける地域計画制度は成立していない、防災水質を主とした河川管理との関係、森林諸科学との関係はどのように考えられ、調整されているのであろうか。組織的な協力関係がなくては成就しえないのではないだろうか。こうした流域管理における問題発掘のためにとりあえず現状の観察が必要だろう。そこで、流域の森林景観と下流の生活域をとらえ、その関係を考察してみることから始めるのはどうだろうか。

流域の森林景観
下流の生活域