感覚と時間

はじめに
 未来に何が起こるか、過去に何があったかを感知する感覚、現在の状態を感知する感覚がある。視覚と聴覚は距離を隔てた事物を感じることによって、接近するものにいつ遭遇するかを、予測することができる感覚であろう。これに対して嗅覚における匂いは、ある場所に残り、そこに以前にあった事物が何かを感じることができる。足跡が残っていれば視覚が同様の過去の動物の通過を感知する。触覚は現在そこにあるものを感じる感覚である。味覚は口の中にあるものの現在の感覚である。
 現在は身体がある場所であり、未来は進行速度で到達する場所である。過去は通り過ぎてきた場所である。一つの場所に留まるのは、現在の持続であり、動作の変化が未来への進行を作り出す。この進行と滞留とともに、諸感覚が現在、過去、未来を感知する。行動が感覚を機能させ、感覚が空間を時間として感知させる。