環境共生

はじめに
 建築は生活空間を構成する建物すべてが該当し、住宅に始まり、個人、民間、公共の様々な建物が存在している。自然環境に対しては人工物に含まれるが、それら建築で構成された居住環境、生産環境が自然と接した所に自然と人工の対比的な関係を見出すのだろう。居住環境の中の樹木、自然地域の中の建物は、それぞれが環境か生活機能を果たしている限り、自然と人工を区別はできない。自然と人工に対立や違和感が生じるのは、自然に破壊的影響を与え、生活環境の中に自然が調和していないことによるのだろう。
 生活環境が自然環境と共存できるか、自然環境に共生できるかは、建築学の空間計画としての広い展開にかかっていることを、建築研究者の方からお聞きしたというより、無理に聞こうとしたのかもしれない。仮に自然環境に共生した生活環境が成立したとすれば、生活行動を計画的に実現する生活空間は自然環境とは合致するものとなっているはずである。その中で建築空間は生活行動にとって自然環境に対するシェルターを空間的に必要とし、また、そのシェルター内部を機能的な生活空間とすることと言うことになる。空間の機能の高度化と生活形態とは交互関係にある。シェルターの有無で戸内、戸外の区別が生じる点からは、建築の内外と同一の区別である。
 しかし、建築の集積が都市環境を形成している場合、戸外は広場や街路のような建築で囲われた空間である。言わば、建築の壁面がシェルターとなり、戸外建築空間となり、生活行動空間の計画対象となる。戸外も建築空間ということになると、建築空間をシェルターによる制限空間とすれば、建築空間に対置される外部空間は制限の無い自由空間となる。この自由空間が人為の及ばない自然空間へと連続する。自然空間はシェルターによって生活空間を防御しないだけ、生活に疎遠で敵対的な関係が生じる。制限された生活空間の束縛からは解放的で、自由な空間である。