近代工芸運動の意味

はじめに
 ウィリアム・モリスの近代工芸運動が、日本では民芸運動へと影響した。日本の江戸時代の工芸は高い水準に達して、ジャポニズムの影響を及ぼしたのに、日本では伝統工芸を衰退させ、民芸運動によって再評価されることになった。日本の工芸は職人の高い技術によるものだったが、工業技術の導入による、工業製品の供給に手工業製品は、対抗できなくなったのだろう。職人から職工へ、労働者へと近代化の中で、工業生産の担い手が替わったことは、ヨーロッパの近代化で生じたことと共通しているのであろう。画一的な工業製品は、生産者の個性ばかりではなく、消費者を無個性なものとして、個性的な生活をも平準化するものとなったろう。個性的な手工芸品の価値を個性的生活の回復の欲求の中から見直そうとしたのが、ラスキン、モリスの主張であったのだろう。職人の工芸から生まれた芸術もまた、天才の技として、生活から遊離し、芸術を生活に結合することも課題であった。