若木の空間

はじめに
 森林の大面積皆伐が少なくなって久しく、若木の林は小面積か、山火事跡地、耕作や開発放棄地に見出しているのだろう。里に近い林は、草地からの推移はアカマツ林となり、アカマツの衰退とともに広葉樹林となっている。また薪炭林や広葉樹の皆伐地からは同じ広葉樹の萌芽林が成立してくる。広葉樹の若齢林が多くなり、秋の山腹を紅葉で彩るようになった。多様な広葉樹が競争し、やがて高齢になるのつれて上下の階層を成立させていくのであろう。様々な広葉樹の若木で成立する森林は、将来の森林構造に向かって競争して成育している。
 若木の成長は速く、優勢な木ほど、成長が加速される。優勢な木は周囲の木を圧倒する樹冠を広げ、やがて、上層を形成するだろう。競争している箒状の樹形は、優勢になると円形となって枝の伸張はその樹種の自然な広がりのままとなる。ホウノキ若木を見つけた。すくすくと上の育ち、枝ぶりは規則的な角度で周囲に広がって円形を描いている。将来の森の上層となるのだろうか。

森林の個性
 森林が失われ、再生途上にあるのが、若木の森林であり、若木同士の競争の中で将来の森林の形は混沌としている。森林が優勢な高木類によって性格づけられるとすれば、まだ、顕著な優勢木は見出せず、様々な可能性がある。すなわち、森林の個性は顕在化していないといえる。

下層の更新木としての若木
 森林が階層構造をもつようになるのは、森林が閉鎖し、閉鎖の中で競争して優勢と劣勢の強弱が明確になっていくにつれてである。優勢な高木層の下層に亜高木層、その下に低木層が形成されていくと、亜高木層や低木層は若木の競争段階から成育して劣勢となったなのか、森林の閉鎖の後に跡から成育してきたのか、どちらのものか、わからない。後から成育してきた高木類の幼木は、次代の森林の更新木となる。高木層が何らかのの原因で破壊されると、下層の樹木は一斉に成長が盛んとなる。それ故、下層の若木を将来の更新木であるが、そのチャンスが訪れなければ、下層の暗さに耐え切れずに枯死してしまうものも出てくる。