森林と環境

はじめに
 森林は表土に根茎を伸ばし、根をマットのように絡みつかせて、地表を広く、覆う植生である。K氏の森林こそが、地上の環境を一体となって連続しており、人間の環境をも形成しているという考えは間違いではないだろう。原始林の中で生活する人類の姿を考えれば、納得できるかもしれない。地表、土壌、樹木の根茎を意識すると、地下につながった地表を覆う森林の姿が浮かんでくる。失われた森林も、いつか、地下の土壌の力で復元できるのだという考えは、潜在自然植生という考えの中にもあるのであろう。
 地上で見る森林は、空間を包み込んでいるように感じられる。風が森林の中を吹き抜ける時も、その風を木々の樹冠は風を留めて、ざわめきの音に換えているようである。林内の空間は、森林が捕まえている大気におだやかに満たされている。林外の強い風、皮膚に突き刺すような、湿気または乾燥や、熱気や寒気は、程よい潤いと微風に代ってくる。
 森林の樹木は陽光に向かって枝を伸ばし、樹冠は陽光を迎え入れているかのようのである。陽光を生命の活動の糧として、森林そのものが陽光から生み出されたようである。日中の過酷な陽光と朝夕や曇天の僅かな陽光をより分けて、林内は穏やかな光の中で、下層の植物が育っている。多層な生命の循環を生み出している。
 森林は物理的な環境を利用する生命の複合体であり、また、生命の輝かしい活動に充ちた環境を作り出している。